量子コンピューター実現のカギとなる「量子スピン液体」を示す新材料

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酸化リチウムオスミウムのハニカム構造モデル

オレゴン州立大学OSUの研究チームが、量子コンピューターのキーとなる可能性がある物質を見出した。オスミウム(記号Os)を用いた無機化合物で、絶対零度近くに冷却しても、電子スピンの向きが整列しない「量子スピン液体」の状態示すという。次世代のスーパーコンピューターとされる「量子コンピューター」への応用が期待されるもので、その研究成果は、2018年4月26日の『Scientific Reports』誌にオンライン公開されている。

コンパスの磁針のような永久磁石では、電子は皆同じ方向に「自転」しており、電子スピンの向きは整列している。強磁性体でない物質も、絶対零度まで冷却すると、系全体のエネルギーを低下させるため、電子スピンは規則的に一方向に整列し、強磁性あるいは反強磁性という「固体」に相当した状態を示す。そして絶対零度近くに冷却しても電子スピンが整列しないで揺らぐ「液体」に相当する状態の存在も指摘され、特に21世紀に入ると、ハニカム結晶構造を活用することで量子スピン液体状態を実現できることが提唱されてから、研究競争が活発化している。

今回研究チームは、ハニカム構造の結晶格子を構成する「酸化リチウムオスミウム」がこの量子スピン液体状態になっていることを見いだした。研究チームのMas Subramanian教授は、「量子スピン液体は、これまでイリジウムを含むごく少数の無機物質でのみ観察されていた。オスミウムは周期律表でイリジウムのすぐ隣にあり、量子スピン液体としての望ましい条件を持っている」と説明している。

現在のコンピューターが0と1の「ビット」に基づくのに対して、量子コンピューターのコンセプトは、0と1の中間の値を示すベクトルといえる量子ビット(qubit:キュービット)を使うことで、より少ないエネルギーで、極めて高速で作動することが期待されている。判りやすい例えとして、球面を使ってビットとqubitを説明すると、ビットは球の南北2極のどちらかにしか存在しないが、qubitは球面上のどこにも存在できる。つまりqubitは、ビットとは比較にならないほど大きな情報保存能力を持ち、遥かに少ないエネルギーで高速で作動することを意味する。

量子スピン液体においては、電子スピンが揺らぐ「磁気フラストレーション」がqubitとして活用できる可能性があり、データ処理や保存の方法を革新することが期待されている。

研究チームは、この化合物はオスミウムを含有する初めてのハニカム構造物質だが、今後このハニカム構造物質を有する様々な化学系を探索するとしている。

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Discovery of new material is key step toward more powerful computing

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