ウィーデマン・フランツの法則に従わない不思議な現象を観測

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スイスのチューリッヒ工科大学の研究チームは、一般的な金属において熱と電気の伝導率の関係を示すウィーデマン・フランツの法則が、強い相互作用のあるフェルミオン系では当てはまらず、不思議な振る舞いをしていると発表した。研究成果は、2018年8月9日付けの米国科学アカデミー発行の機関誌『PNAS』(米国科学アカデミー紀要)に「Breakdown of the Wiedemann-Franz law in a unitary Fermi gas」として掲載されている。

一般的な金属において、熱伝導率kと電気伝導率σは自由電子の流れに起因する。「ウィーデマン・フランツの法則」では、金属の種類によらず、同一温度では熱伝導率と電気伝導率の比k/σは一定であるとしている。しかし、一部の金属では電子同士の相互作用が強いため、この法則を満たさないことが知られている。

研究チームは、相互作用の強い粒子系における現象を精査するため、極めてクリーンなプラットフォームを確立した。まず、フェルミオンリチウム原子をサブマイクロケルビン領域まで冷却し、レーザー光を用いてトラップする。数十万個の原子を2つのグループ(リザーバー)に分けて閉じ込め、レーザーで個別に加熱、リザーバー間に温度差ができたところで、レーザーで微小なくびれ(量子ポイントコンタクト)を生成してリザーバー同士をつなげ、熱と粒子が移動できるようにした。

このシステムにおいて熱伝導率と粒子伝導率の比を求めたところ、ウィーデマン・フランツの法則の予測よりも1桁小さいことがわかった。このことは、一般的な金属の場合と、強い相互作用のあるフェルミオン系とでは、熱と粒子の流れに関与するメカニズムが異なることを示している。2つのリザーバーが平衡状態に達する前に、熱と粒子の流れが消滅したと考えられる。

さらに、ゼーベック係数を測定すると、相互作用しないフェルミガスの場合に予想される値に近かった。実験では原子同士が強い相互作用をして超流動体状態の領域があることがわかった。これは、超流動体として知られているヘリウム4のゼーベック係数がゼロであることを考えると不可解な結果だ。

これらは、強い相互作用をするフェルミオン系の微視的モデルに新たな課題をもたらすと同時に、新しい熱電デバイスの可能性を示している。例えば、温度差を粒子の流れに変えて動作するクーラーやエンジンといったものが考えられる。

関連リンク

Breaking down the Wiedemann–Franz law

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