京都大学は2019年2月14日、東京大学と共同で、ある種の鉄系超伝導体において、液晶状態になろうとする「やわらかい電子」が、従来金属とは異なる不思議な金属(ストレンジメタル)状態を示すことを発見したと発表した。
今回、共同研究チームは鉄系超伝導体の一種であるセレン化鉄(FeSe)に着目し、セレン化鉄を幅広く硫黄置換したFeSe1-xSxの高品質純良単結晶を作製し、オランダ・ラドバウド大学との共同研究により、電気特性を詳細に測定することでその金属状態を調べた。一連の物質では低温で電気抵抗がゼロになる超伝導が出現するため、電気特性を調べるためには超伝導状態を壊す必要がある。そこで共同研究チームは、ラドバウド大学が有するナイメーヘン強磁場研究所において強い磁場をかけることで超伝導状態を壊し、電気特性を極低温まで調べた。
その結果、電子液晶状態の消失点の周辺で、通常金属とは異なる不思議な金属状態が現れることを明らかにした。さらにその領域では、電子の有効的な重さが増大していることも見出した。ストレンジメタルと呼ばれるこのような不思議な金属状態は、これまで高温超伝導体などで発見されており、高温超伝導を引き起こす鍵と考えられてきた。
このストレンジメタルは、磁気的な秩序が消失する点(臨界点)との関連性が研究され、今まで磁気的な機構による異常な性質と考えられていた。しかし今回の研究により、磁気的な性質を持たず、電子集団がある一方向に揃おうとする液晶のような性質を持った物質において、ストレンジメタル状態が現れることが初めて明らかになった。今後は、このような不思議な金属状態の性質を明らかにしていくことで、高温超伝導など物質の示す特異な電子状態を実現するための新たな指針を与えることが考えられるとしている。