大阪公立大学大学院情報学研究科の研究グループは2024年5月15日、添加処理におけるアルミニウムやチタンなど12種類の合金元素について、120パターンの組み合わせを理論計算し、結合メカニズムを体系的に解明したと発表した。チタンが特定の場所に配置するときに窒素や炭素と結びつき、鉄が硬化することがわかった。
鉄鋼は、鉄のほかに、シリコンやマンガンなどさまざまな合金元素が含まれ、その組み合わせで強さや柔軟さをもつ高機能な材料が作られる。その設計には、浸炭や窒化のプロセスを最適化し、元素間の相互作用を理解することが必要だが、合金元素がそれぞれどのように結合するかについての体系的な調査は実施されていなかった。
研究では、浸炭と窒化について、第一原理計算を用い、元素間の相互作用エネルギーを定量的に評価。炭素や窒素の原子と、アルミニウムやチタンなどの原子との間で形成されるさまざまな位置関係や組み合わせにおける二原子クラスターの相互作用を調べた。
元素の組み合わせは、炭素と窒素それぞれに12種類の合金元素、体心立方構造の位置関係で最も近いものから5番目のものまで、合計120パターンについて計算したところ、特定の位置関係にある限られた元素のみ、炭素や窒素と強く結合することがわかった。
重回帰分析と層別分析を利用した解析では、炭素や窒素と結合するのは鉄原子より大きい元素だとわかった。三原子クラスター間の相互作用エネルギーについての調査では、エネルギー状態が原子の配列の違いで大きく変わること、鉄を硬化させるナノクラスターを形成する元素の組み合わせでなければ、三原子クラスターは結合しないことを突き止めた。
研究の成果は、特定の用途に適した鉄鋼材料開発につながると期待でき、表面改質プロセスの最適化の基礎となりえる。今後、さらに多くの元素の組み合わせや異なる環境条件下での相互作用の調査し、産業界との連携を進めていく。