電磁濃縮法により985テスラという強力な磁場発生と、その測定に成功 東大

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電磁濃縮法による超強磁場発生方法の模式図

東京大学物性研究所の嶽山正二郎教授、中村大輔助教、澤部博信技術職員の研究グループは2018年1月31日、電磁濃縮法という超強磁場発生方法により985テスラという強力な磁場を発生し、それを高精度に計測することに成功したと発表した。室内での実験、かつ高度に制御された磁場として、これまでの世界最高記録730テスラ(2011年、同研究グループによる)を大幅に更新した。

強力な磁場を発生する際は、それに伴って強大な応力が発生するため、磁束を押さえ込む必要がある。そのため100テスラ以上の超強磁場発生には磁場発生コイルを意図的に破壊するが、これには高度な特殊技術が必要で、爆薬を用いた爆縮法など幾つかの手法がある。しかし精密な物性測定のためには、高度に制御された一様な磁場を発生する必要がある。これを実現できる方法は現在、「一巻きコイル法」と「電磁濃縮法」のみだという。特に、300テスラ以上を発生させる場合は、特殊なコンデンサー電源に蓄積した電気エネルギーを瞬時に磁場発生コイルに巨大電流として投入し、電磁力を使って磁束を濃縮する「電磁濃縮法」に限られる。

中村助教は、独自に開発したシミュレーションにより、10年前に嶽山教授が電磁濃縮用に考案した高効率磁場発生コイルを用いて超強磁場を発生する際に、磁束濃縮に用いる種磁場(初期値となる弱い磁場)の値を調整することで、より強力な磁場が発生できることを高い信頼性で予測した。しかし、1000テスラ近くでは、強烈な電磁ノイズ、磁束の高速収縮に伴う衝撃波などにより測定が難しく、電気的な測定では600テスラ程度が限界だった。今回同研究グループは、ファラデー回転という光学的な測定手法を使用し、種磁場の値を最適化して985テスラの超強磁場を発生し、高精度かつ高い信頼性で測定することに成功した。

1000テスラ領域の強力な磁場の実現により、例えば物質を構成する原子、分子に個別に磁束量子(磁束の1本1本が量子化された状態)を貼り付けて原子近傍の情報を引き出すことなどが可能となる。また物質の中の電子の運動を1nmスケールに閉じ込めるなど、新たな機能の解明にも役立つ。室温でも磁場のエネルギーが非常に大きくなるため物質の量子現象が容易に観測できるようになる。

今回発生した磁場は空間的にも時間的にも人工的に制御して発生でき、信頼性ある物理計測が可能だ。同研究グループでは、半導体、ナノマテリアル、有機物質、超伝導体、磁性体で未解明の固体物理量子現象の解明など、物性物理学の新しい発見とマテリアルサイエンスへの多大な貢献が期待されるとしている。

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