- 2019-6-6
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- 2019年版 次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望, FET(フィールド・エフェクト・トランジスタ), GaNパワー半導体, SBD(ショットキー・バリア・ダイオード), SiCパワー半導体, SiC-FET, SiC-SBD, Siパワー半導体, パワーエレクトロニクス機器, パワー半導体, 富士経済, 酸化ガリウム系パワー半導体
パワー半導体市場規模は全体として堅調に推移
富士経済は2019年6月5日、自動車/電装分野を中心に需要増加が期待されるパワー半導体の世界市場を調査し、その結果を「2019年版 次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望」として発表した。
パワー半導体は、電源の制御や電力の供給を行う半導体を指す。半導体といえば、マイコンやメモリなどの集積回路(LSI)がよく知られているが、これらは同じ半導体と言っても演算や記憶に関わる「頭脳」である。一方、パワー半導体は「筋肉」に例えられる。マイコンやメモリの動作をはじめ、モーターの駆動やバッテリーの充電などのために用いられるからだ。
そのようなパワー半導体の中で「次世代パワー半導体」と呼ばれるのがSic(シリコンカーバイド)とGaN(ガリウムナイトライド)だ。バンドギャップがSi(シリコン)より広いので、「ワイドギャップ半導体」と呼ばれることもある。バンドギャップの比率を示すと、Siが1.1、SiCが3.3、GaNが3.4となる。Siを次世代パワー半導体とすることで、機器の大幅な小型化と効率化が実現できる。
この調査では、現状の主軸であるSiをはじめ、SiCやGaNといった次世代、酸化ガリウム系などの次々世代を含めたパワー半導体16品目を調査。さらには、構成部材17品目と製造装置21品目、パワーエレクトロニクス機器30品目の市場について現状を分析し、将来を予測した。
まず、全体としてパワー半導体市場は堅調に拡大。2018年の合計は3兆円弱に達したと報告している。
次世代パワー半導体の市場規模も拡大の予測
中でも、SiCパワー半導体市場について、2018年は前年比41.8%増の390億円と報告。現状はSiC-SBD(ショットキー・バリア・ダイオード)が7割を占め、SiC-FET(フィールド・エフェクト・トランジスタ)も自動車/電装分野を中心に伸びているという。そして、2022年頃からは、自動車/電装分野の需要増加が期待され、大型商用車や高級車から採用が広がり、2025年頃には大衆車でも採用されると予想。2030年には2018年比10.8倍の4230億円を見込んでいる。
また、GaNパワー半導体市場は、立ち上がりが遅れているものの、今後の高耐圧化などによって自動車/電装分野などを中心に幅広く採用されると予測。当面は市場拡大のペースは緩やかだが、2022年以降の本格的な需要増加が想定され、2030年には2018年比60.3倍の1085億円に達すると予想している。
一方、酸化ガリウム系パワー半導体市場は、SBDの量産化が予定されている2019年に本格的に立ち上がると予想。また、2020年頃にはFETのサンプル出荷が予定され、その後実用化が進むとみている。そして、2030年には1542億円に達すると予想している。
Siパワー半導体については、2018年は前年比7.5%増の2兆9342億円と報告。中国市況の悪化により、2019年以降は伸びが鈍化するものの、自動車/電装分野での需要増加が市場拡大をけん引するとみており、2030年には2018年比45.1%増の4兆2567億円と予測している。
パワー半導体構成部材の世界市場は、2018年は2087億円と報告。現状は、パワー半導体市場の拡大に伴い、構成部材の需要も増加。今後も自動車の電動化などにより、構成部材市場も拡大すると予想しており、2030年には2018年比2.8倍の5771億円に達するとみている。
パワー半導体の市場、より直近の予測
富士経済は2030年のパワー半導体市場予測をはじき出したが、その一方で矢野経済研究所は2025年のパワー半導体市場規模を予測している。
矢野経済研究所の予測によると、2025年におけるパワー半導体の世界市場規模は、2017年の約1.7倍となる299億2000万ドル(約3兆2711億円)に達するという。
SiCの市場規模についても調査しており、2025年には25億4000万ドル(約2777億円)に成長すると予測している。
パワー半導体世界市場、2025年は299億2000万ドルに成長――情報通信、民生、産業、自動車の4分野全ての需要が伸長 矢野経済研究所