UCバークレー、酵素を使って化学汚染物質を吸着・分解するマットを開発

ファイバーマットは、有毒な化学物質を分解する酵素(白い円)を安定した状態で保持している

カリフォルニア大学バークレー校の科学者らは、有毒な化学物質を吸収・分解する酵素を含んだマットを開発した。これまで生体内でしか機能しなかったタンパク質を人工的な環境内で活性に保ち、その効力を利用できる画期的な発見だ。研究成果は、『Science』誌2018年3月16日号に掲載されている。

これまで、自然環境からタンパク質を取り出し、その活性を阻害することなく利用することは困難だと考えられていた。これは本来の環境から取り出すとタンパク質が分解してしまうためで、それを防ぐためには、目的とするタンパク質を例えば他のタンパク質と組み合わせて特殊な構造へと埋め込む必要がある。

今回研究を主導したバークレー校材料工学部のTing Xu教授は、タンパク質の配列と表面の傾向を分析し、タンパク質がその構造と機能を維持するために必要なものを提供する合成ポリマーを開発することに成功した。

ランダムヘテロポリマー(RHP:Random HeteroPolymers)と名付けられたこの合成ポリマーは、目的とするタンパク質表面にあるパッチと相互作用するように設計された、4種類のモノマーサブユニットから構成されている。これらのモノマーは、タンパク質表面との相互作用の柔軟性を最大化できるよう、天然のタンパク質を模倣して結びつく。

研究チームはこのRHPを、殺虫剤や化学兵器に使用される有毒な有機リン酸を分解する有機リン酸加水分解酵素(OPH)と呼ばれるタンパク質と混合。RHPとOPHを浸漬したファイバーマットを作成し、よく知られた殺虫剤に浸したところ、わずか数分でファイバーマットのおよそ10分の1相当量の殺虫剤を分解・解毒することを確認した。

Xu教授は、「これは他の酵素や物質にも適用可能なアプローチであり、地域ごとに必要な環境問題に対応するための簡易的な化学実験室にできる可能性がある」とその成果を説明している。深刻な環境問題や化学兵器が使用された戦場における除染など、幅広い応用が期待される技術と言えるだろう。

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Researchers create a protein ‘mat’ that can soak up pollution

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