理化学研究所、4μmの薄板ガラスを用いた柔軟な流体チップを発表

科学技術振興機構と理化学研究所は2016年5月26日、厚さ4μmの超薄板ガラスを材料に用いた柔軟な流体チップを作製する技術を確立したと発表した。同技術を開発したのは、理化学研究所生命システム研究センター集積バイオデバイス研究ユニットの田中 陽ユニットリーダーとヤリクン・ヤシャイラ特別研究員らのチームだ。

ガラスは、ほとんどの溶媒・溶質に対して安定する上にどのような流体にも対応できる素材であるため、効率良く高速反応を示す小型流体チップの材料に用いられてきた。しかし、従来のガラス流体チップは厚い、重い、硬いなどの特徴があり、小型、軽量、柔軟さ、高耐圧性の点に問題があった。そこで理化学研究所の研究チームは、市販品ながら厚さ4μmで柔軟な超薄板ガラスに着目した。

従来のガラス加工技術は、前処理、固定、洗浄などの加工手順が多い上に、ガラス破損やひび割れを起こすリスクが高く、柔軟で薄いガラス流体チップの作製に適さない。そのため、理化学研究所の研究チームは、超短パルスレーザーを用いた超薄板ガラスの高精度な加工技術と、新開発した薄板ガラス接合技術を採用し、超薄板ガラス流体チップを作製する基盤技術を確立した。

超短パルスレーザーによるガラス加工技術は、極めて短いパルスで微小エネルギーを発してガラスを少しずつ削っていくため、ガラス破損やひび割れを引き起こすリスクがない。理化学研究所の研究チームは同技術により、厚み4μmの超薄板ガラス3枚のうち1枚目に流体の入り口と出口として直径1mmの穴を、二枚目に幅10μmの流路を加工。続いて、1枚目、2枚目、3枚目の順に熱で接合し、厚さ12μmの非常に柔軟なガラス流体チップを作製した。

長さ方向と幅方向での曲げ実験と長さ方向でのねじり実験を実施し、同チップの柔軟性を証明するのに成功。測定の結果、長さ方向での最小曲げ半径が2mm、幅方向での最小曲げ半径が3mm、ねじり上限が約40度だと明らかになった。

今回開発した超薄板ガラス流体チップは、個別化医療、生命科学研究、エネルギーデバイスなど、幅広い分野への貢献が期待できる。生命科学研究では、微小な細胞、細菌、バクテリアを高分解能、高倍率で観察するために、開口数の大きなレンズを使用し、レンズから細胞までの距離を可能な限り接近させる必要がある。今回の技術を用いると、従来のカバーガラスとスライドガラスで構成されたガラスチップの約100分の1まで薄くした流体チップを提供できるという。

また、超薄型ガラスの優れた性質を活用すれば、これまでにない軽くて薄い、寿命の長い、電気性能も優れたウェアラブルデバイスの開発につながる。さらに、医療分野においては、従来の20分の1の薄さで、頑丈で小さい薬物送達デバイスとして応用できるという。

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