イメージング質量分析の前処理時間を10分の1に短縮――浜松ホトニクス、「イオン化支援基板」を開発

浜松ホトニクスは2018年5月10日、光産業創成大学院大学と共同で、イメージング質量分析の対象となる試料のイオン化に必要な前処理時間を短縮するイオン化支援基板「DIUTHAME(Desorption Ionization Using Through Hole Alumina MEmbrane、ジュテーム)」シリーズを新たに開発したと発表した。主なイオン化法の一つであるマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization、MALDI)と比較して、前処理時間を10分の1程度に短縮できる。

レーザーのエネルギーを吸収する低分子の有機化合物(以下マトリックス)を試料に混ぜ、レーザーを照射することで試料をイオン化するMALDIは、イオン化が難しいタンパク質などの生体高分子の構造を壊すことなくイオン化でき、また質量分析と同時に試料の成分の分布状態を画像化するイメージング質量分析が可能なため、特に生命科学の分野や創薬分野で普及拡大が見込まれている。しかし、マトリックスの調合、塗布、乾燥までの前処理に30分程度の時間を要することや、試料にマトリックスを均一に塗布する熟練した技術が必要なことなどから、マトリックスを使わないイオン化法が求められていた。

今回、同社は直径200nm程度の貫通孔を持つポーラスアルミナをイオン化支援基板の部材として採用することで製品の開発に成功した。同製品を試料に乗せることで、毛細管現象により試料の分子が表面に上昇し、その分子にレーザーを照射してイオン化するため分子の構造が壊れにくい。試料に乗せるだけでイメージング質量分析の前処理が完了するため、前処理時間を3分程度に短縮できる。

また、マトリックスを均一に塗布する工程が不要になるため、前処理のばらつきがなくなり再現性の高い測定結果が得られるようになる。さらに、試料とともにイオン化される低分子のマトリックスを使用しないため、工業材料やドーピング禁止薬物などMALDIでの測定に不向きな低分子も、高い精度で測定可能だ。

価格は直径17mmの有効径を持つ「A13331-18-1」(チャンネル数:1)が2万円、2mmの有効径を持つ「A13331-3-1」(チャンネル数:1)が7600円、「A14111-3-1」(チャンネル数:9)が1万3000円(いずれも税抜)だ。既存のMALDI-TOF-MS装置の測定プレート上で使用できるため、主に創薬分野や工業分野でMALDI-TOF-MS装置を使用している国内外の企業や大学の研究者向けに、2018年5月11日からサンプル出荷を開始する。

同社はこの製品を、2018年5月15日から5月18日までホテル阪急エキスポパークで開催される「日本質量分析学会・日本プロテオーム学会 2018年合同大会」に出展する。

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