超高容量を示すナトリウムイオン電池向け炭素負極材料を開発――ナノサイズの空孔を多くもつハードカーボンを合成 東京理科大学ら

東京理科大学は2020年12月14日、物質・材料研究機構および岡山大学と共同で、超高容量を示すナトリウムイオン電池向け炭素負極材料を開発したと発表した。

資源量が豊富なナトリウムを利用したナトリウムイオン電池は、電力貯蔵用の大型蓄電池としての応用が期待されているが、リチウムイオン電池と比較してエネルギー密度に課題があった。

ハードカーボン(難黒鉛化性炭素)は、可逆容量(使用可能な容量)や作用電位、サイクル寿命、資源の豊富さなどのバランスが良く、ナトリウム蓄電池の有望な負極材料とされてきた。同大学らの研究グループは、グルコン酸マグネシウム(Mg(C6H11O72)とグルコースの混合物を加熱して酸化マグネシウム(MgO)粒子を形成。これを鋳型とする合成方法によって、これまでの炭素負極材料よりも大幅に高い容量を示すハードカーボンの合成に成功した。

同研究グループは以前よりハードカーボンの研究を行ってきたが、今回、可逆容量を最大限引き出すための合成条件と電気化学特性の体系的な研究を実施。その結果、600℃で混合物を前処理加熱することで、生成される炭素マトリックスの中にナノサイズのMgO粒子が形成され、その後の塩酸による洗浄と1500℃での高熱処理を通すことでナノサイズの空孔を多数持つハードカーボンが合成された。

ナトリウムイオン電池の炭素負極材料の容量は通常300~350mAh/g程度だが、このハードカーボンを負極としたナトリウムイオン電池は、478mAh/gという非常に大きな可逆容量を示した。また、初回放充電におけるクーロン効率(充電に要した電気に対して有効に取り出せた放電電気量の比で、充電効率を示す指標)は88%と高い値を示した。

合成したハードカーボンと既報の負極材料の作動電位と容量/エネルギー密度の比較

リチウムイオン電池の負極材料として用いられる黒鉛の理論容量は372mAh/gだが、これと比較しても相当の高容量で、同じ容量と電位を示す正極を用いると仮定した場合、黒鉛を用いたリチウムイオン電池と比較して、エネルギー密度が19%向上するという。

今回開発した負極材料を用いることで、高エネルギーなナトリウムイオン電池の実現が期待される。さらに正極の電解質の開発が進めば、リチウムイオン電池の性能を凌駕するナトリウムイオン電池を実現できる可能性があるという。

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