- 2024-12-5
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英オックスフォード大学の研究チームが、マイクロスケールの極小で生体適合するソフトハイドロゲルリチウムイオン電池を開発した。低侵襲の生体医療機器に電力を供給できるという。同研究成果は2024年10月25日、「Nature Chemical Engineering」誌に掲載された。
数立方ミリメートル以下の小さなスマートデバイスは、同様の小さな電源を必要とする。生体組織と関わる低侵襲の医療機器の場合、さらに電源は、柔軟性と生体適合性、生分解性、大容量、トリガーによる起動、遠隔操作能力などの特徴を備えていなければならない。今回、研究チームはこれらの要件を同時に満たす電池を開発した。
研究チームが開発した電池は、界面活性剤である脂質の二重層膜で支持された生体適合するシルクハイドロゲル液滴から構成される。体積10ナノリットルの3つのシルクハイドロゲル液滴が脂質バリア膜を介して接続され、片側のゲルは正極、もう片側は負極、真ん中のゲル液滴はイオン伝導体として機能する。
紫外光によってシルクハイドロゲルが架橋され、液滴間の脂質壁が破壊されることで、リチウムイオンの放電が開始される。使用した後、シルクハイドロゲルは生分解する。現在までのところ、最小のハイドロゲルリチウムイオン電池であり、優れた高エネルギー密度を持つという。
研究チームは、同電池を使って、合成細胞間の荷電分子の移動に電力供給し、体外におけるマウスの心臓の拍動と除細動の制御に成功し、手術中に心臓のリズムを制御する除細動器としての利用可能性を示した。また、同電池の動きを制御するために磁性粒子を含めて、移動可能なエネルギーキャリアとしての機能も実証した。
同電池は、マイクロロボットや合成組織、非生物/生物界面、移植可能な医療機器など、特にバイオ応用の小型ロボットに関連し、臨床医学を含むさまざまな分野での貢献が期待される。
オックスフォード大学のHagan Bayley教授は、「小型ソフトリチウムイオン電池は、生理条件下で動作可能な生体適合性電子機器の素晴らしい未来を提示します」と説明した。