水蒸気バブルで液体を自在に操作することに成功――泡で動かす強力マイクロバブルポンプ  京都大学

京都大学は2019年3月29日、脱気した水をレーザー光と金ナノ粒子を使って局所的に加熱し、急激な流れを伴う水蒸気のマイクロバブルを発生させ、その流れの向きや強さをレーザー光の形を変えることで制御する研究に、同大大学院の名村今日子助教授らが成功したと発表した。この研究成果は、少量の液体を自在に動かすマイクロポンプとして応用できるという。

発表によると、名村助教授率いる研究チームはすでに、水の局所的な加熱によりバブルが発生すると秒速1m程度の流れが起きることを発見していた。今回の研究では、バブルを作るための加熱スポットの形を変え、バブル周囲の温度分布を制御することで、流れの向きを自在に操ることに挑戦した。

名村助教授らは初めに、ガラス基板上に金ナノ粒子薄膜を作製した。この薄膜は約10nmと非常に薄く、光を効率よく吸収して熱に変換できる。そのため、レーザー光を一点に集中することで、その部分を局所的に発熱させられる。また、照射する光のスポットの形を変化させれば、熱源の形を変えることができる。

次に、薄膜にレーザースポットを一点だけ作製し、脱気した水を局所的に温めることで、レーザースポット上に直径10μm程度のバブルを発生させた。この水蒸気バブルは周囲の水を薄膜の表面に沿って引き込み、薄膜表面に垂直な方向に向かって加速する。それに伴って生じる流れは非常に急激で、バブルから数百μm離れたところでも、秒速数mm程度の速さの流れが発生する。

(a)-(c)薄膜に照射した光の強度分布と(d)-(f)水蒸気マイクロバブルの周りに発生する流れ。

バブルに伴う流れの向きや強さは、バブル周囲の温度分布によって決まる。バブルの周囲では薄膜表面に垂直な方向に温度差が生じる。そのため、バブルはその温度差を打ち消そうとして、薄膜表面に垂直な方向に向かって周りの水を動かす。名村助教授は「このバブルの周りの温度分布を変えてやれば、バブルの周りの流れの向きも変えられるはず」と考えた。

そこで、レーザースポット上に生成したバブルの隣に、もう一点サブレーザースポットを追加した。すると、サブレーザースポットの強度に応じて流れの向きが傾いていくことが分かった。名村助教授は「これは、サブレーザースポットのおかげで薄膜表面に平行な方向の温度差がバブル表面に生まれ、その方向にも水が動かされるようになったため」という。

さらに研究をすすめると、サブレーザースポット強度が大きくなると、基板に対して垂直な向きの力が減少し、平行な向きの力が増大することが分かった。また、基板表面に平行な方向には最大0.01μN程度の力をかけられることが判明した。そして、サブレーザースポットの位置を変えることで、流れの向きを基板表面に平行な面内で360度自由に操作できたとしている。

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