複合エマルション中の水と油を分離して、99.99%の純度で回収できる画期的な膜を開発

界面活性剤はエマルション中の水と油を安定化するため、さまざまな工業プロセスで利用されている。しかし、廃液をほぼゼロにしつつ、水と油を同時に回収するのは困難だ。

中国の研究チームは、この課題を解決するために親水性膜と疎水性膜で挟まれたヤヌスチャネル膜(Janus Channel of Membranes:JCM)と呼ばれる閉鎖型膜チャネルの技術を開発した。複合エマルションから99.9%を超える純度の水分と油分を、それぞれ75%と97%という高収率で回収する。研究成果は、『Science』誌に2024年11月7日付で公開されている。

複雑な混合物から水と油を分離するプロセスは、排水処理や生物学的選択など多くの科学/産業分野において必要不可欠だ。膜技術はこのプロセスに大きな役割を果たしているが、従来法の多くは一度にどちらかの成分しか除去することができない。

JCMの名称は、2つの顔を持つローマ神話の神であるヤヌスに由来しており、水と油を同時に処理できるという特徴を象徴している。JCMは、親水性膜と疎水性膜のペアで構成されており、膜間は4~125mmで調整できる。エマルションをJCMに通すと、圧力により水が親水性膜を通過する一方で、油はチャネル内で濃縮される。濃縮した油は密度が高まると、小さな油滴は衝突して合体し、より大きな油滴が形成されて疎水性膜を通過できるようになる。この連続プロセスにより、濃縮、合体、解乳化のフィードバックループが生じ、従来のシステムで見られた濃縮の問題を回避しながら油と水を同時に高純度で分離できるという仕組みだ。

試験では、油分の回収率は97%、水分の回収率は75%で、どちらも純度は99.9%を超えていた。また、従来の親水性膜は油分が10%未満のエマルションにしか対応できないが、JCMは油分40%の油中水滴型エマルションにも使用でき、水の回収率50%以上、油の回収率80%以上を達成している。

さらに、この膜システムは大規模産業への応用も可能だ。バイオ燃料からの水やグリセロールの分離、鉱山廃棄物からの貴金属の分離、乳製品からのタンパク質やビタミンなどの分離に利用できる可能性がある。

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