50年来の化学界の謎に迫る――AIがタンパク質の立体構造を数日間で予測

タンパク質構造予測の重要な指標として知られるコンペ「Critical Assessment of protein Structure Prediction(CASP)」で、イギリスのAI企業であるDeepMindのAIシステム「AlphaFold」が、高価な装置と年数を必要とする実験による構造解析の結果に匹敵する精度を示した。

50年にわたり化学界の悩みの種だった「タンパク質のフォールディング(折りたたみ)問題」への大きなブレイクスルーであり、今後、生命や進化、医学などさまざまな分野での理解が深まることが期待できる。

生命の維持に必要不可欠なタンパク質は、直鎖状に結合したアミノ酸で構成されており、折りたたまれることで、それぞれ特有の立体構造を持つ。この立体構造はタンパク質の機能に直接関係しており、崩れるとタンパク質が正しく働かなくなる。がんや認知症、感染症などほとんどの病気が、タンパク質の働きに関係していることが分かっており、構造の予測は疾患の解明や創薬において役に立つものだ。

今から約50年前の1972年、Christian Anfinsenは、タンパク質を構成するアミノ酸配列が最終的な立体構造を決定する可能性を示し、ノーベル化学賞を受賞した。その後、世界中の科学者たちが、正確かつ迅速にタンパク質の立体構造を調べる方法を見つけようと、半世紀にわたり研究を進めてきたが、まだ解明には至っていない。

CASPは1994年から2年ごとに行われているタンパク質の立体構造予測コンペで、参加チームは約100種類のタンパク質について、アミノ酸配列から立体構造をコンピューターで予測する。

今回、DeepMindのAlphaFoldを用いて、課題となるタンパク質の約3分の2のモデルを作成したところ、100点満点中90点以上のスコアに達した。90点以上であれば、モデルと実験で決定した立体構造との間の差は小さいとされている。

従来の実験室的な手法では、高価な装置が必要で解析に何年もかかることがあった。しかし、AlphaFoldはわずか数日間で立体構造を予測した。

なお、今回予想したタンパク質の構造は、単一のタンパク質またはドメインであり、タンパク質複合体の構造については、新しい課題となっている。

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