- 2017-12-29
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- CosmicWatch, Spencer Axani, ボストン大, ミューオン, 米マサチューセッツ工科大学(MIT)
米マサチューセッツ工科大学(MIT)原子核物理学研究所の物理学者らは、ポケットサイズの宇宙線ミューオン検出器「CosmicWatch」を公開した。製作費はわずか100ドルで、市販されている部品を使って学生でも数時間で組み立てられるという。チームをリードするSpencer Axani氏は、CosmicWatchの詳細をWebサイトにて公開している。
(Webサイトへのリンク:http://cosmicwatch.lns.mit.edu/)
宇宙線は、太陽のフレアや超新星爆発などで生まれた高エネルギー放射線で、地球の大気に衝突すると電子よりもわずかに重い荷電粒子ミューオン(ミュー粒子:muon)へと崩壊し、地上に絶え間なく降り注いでいる。このミューオンは非常に高い透過率をもつが、物質の密度が高い部分と低い部分では透過する数が異なるため、これを利用して物体の密度分布を撮像する「ミュオグラフィ」が、エジプトのピラミッドや福島第一原子力発電所の原子炉内部の調査などに使われている。
CosmicWatchはこのミューオンを捉え、カウントするデバイスだ。ミューオンが通過すると発光する5x5cmのプラスチック製シンチレーター(scintillator)、光を増幅するシリコン光電子増倍器(SiPM :silicon photomultiplier)、ディスプレイ、Arduino Nanoと3Dプリンティングされたケースから構成され、全ての資料は、部品表を含み、GitHubに公開されている。
Axani氏によると、アウトリーチプログラムの一環として、ワルシャワ大学の学生がCosmicWatchを観測気球に取り付けて上空のミューオンを観測したところ、2秒に1個程度である海面位でのカウントに比べ、上空では50倍もの増加がみられたという。
また、ボストン大のグループはCosmicWatchを高度3万mの成層圏までロケットで打ち上げることを計画している。研究チームは「高度が高くなれば宇宙線からミューオンが生成されている領域を超えるだろう。このため、ある程度の高度まではミューオン数が増加し、その後は減少に転ずるはずだ」と説明し、世界中の学生が安価なミューオン検出器CosmicWatchを使い、宇宙や宇宙線に対する興味や関心を高めることに期待している。