環境と経済面を配慮した、金属加工用の高性能ポリマー潤滑剤を開発

© Fraunhofer IAP, Photo: Kristin Stein

ドイツのフラウンホーファー研究機構応用ポリマー研究所を中心とする産学連携チームは2024年3月7日、金属加工に必要な「高性能ポリマー潤滑剤(HPPL:High Performance Polymer Lubricant)」を開発したと発表した。HPPLは、既に工業で使用されており、環境に優しく、加工工程を削減できる点が高く評価されている。

金属の釘や網、ばねを製造する伸線加工では、熱間圧延された線材が、狭い開口部を持つ伸線ダイスを通して引き抜かれて細くなる。同工程において、潤滑剤は、摩擦を減らして発熱を最小限に抑え、伸線ダイスの耐用年数を延す重要な役割を担う。

しかし、潤滑剤を使用する前に、母材にキャリア層を塗布する必要がある。キャリア層は、後に除去しなくてはならず、時間と労力を要する上、環境に有害な化学物質も使用される。

今回、研究チームが開発したHPPLは、環境に優しい水溶性ポリマーをベースとした潤滑剤だ。金属に直接塗布でき、複雑な前処理を必要としない上、水溶性であるため、水性溶剤で簡単に除去できる。HPPLにより、伸線ダイスにかかるストレスが最小限となって、ダイスを頻繁に交換する必要がなくなり、資源節約につながる。

ドイツの伸線加工業者は、HPPLの恩恵を直接受けられるため、年間1000万ユーロ(約16億8500万円)以上の節約になると見積もられている。さらに、HPPLは、特殊コーティングを施したワイヤや合金などの伸線加工にとどまらず、伸管加工や冷間鍛造などの分野にも適用できる。

関連情報

Lubricants for wire drawing based on polymers – Fraunhofer IAP

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