ペロブスカイトLEDの発光効率を約4倍に向上させることに成功――次世代型ディスプレイ開発が加速、医療や通信分野にも貢献 九州大学など

今回の研究で開発した、明るく発光するペロブスカイトLED

九州大学は2019年11月12日、擬二次元ペロブスカイトLEDの発光効率を約4倍に向上させることに成功したと発表した。金属ハライドペロブスカイトに添加物を加えて作る擬二次元ペロブスカイトの発光過程を詳細に解析し、適切な添加物を選択することで実現したという。

この研究は、九州大学最先端有機エレクトロニクス研究センター、同大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所、京都大学化学研究所、中国のChangchun Institute of Applied ChemistryおよびChinese Academy of Sciences、フランスのSorbonne UniversitéおよびCNRS-Université de Strasbourgの共同研究グループによって行われた。

擬二次元ペロブスカイトとは、金属ハライドペロブスカイトにナフチルアミンやフェニルアミンを添加し、金属ハロゲン層の厚みを制御したペロブスカイトをいう。金属ハライドペロブスカイトの光電変換効率は、シリコン太陽電池に匹敵する25.2%に及ぶ。金属ハライドペロブスカイトはLEDの発光材料として有望だが、その動作機構は完全には明らかにされていなかった。

擬二次元ペロブスカイト中で電子とホールが再結合すると、一重項励起状態と三重項励起状態が1:3の比で形成される。通常は三重項励起状態からの発光は観測されない。ペロブスカイトにおいては一重項励起状態と三重項励起状態のギャップエネルギーが小さいため(<20meV)、これらの状態間で移動が生じやすくなる。三重項励起状態が一重項励起状態へと変換されると、効率の良い発光が一重項励起状態から観測される。

ここで、擬二次元ペロブスカイトの有機アミンとしてナフチルアミンを用いると、一重項励起状態に変換される前に三重項励起状態エネルギーはナフチルアミンへと移動し消滅する。これは、ナフチルアミンの三重項励起状態エネルギー準位が擬二次元ペロブスカイトの三重項励起状態エネルギー準位よりも低い位置にあるためだ。その結果、発光に関与するのは4分の1の割合で形成された一重項励起状態のみとなる。

一方、有機アミンとしてフェニルアミンを用いると、高い三重項励起状態エネルギー準位を持つフェニルアミンへのエネルギー移動が生じないことから、三重項励起状態エネルギーを発光に利用できる。この結果、発光効率が約4倍に向上することが分かった。

ペロブスカイトLEDは低コスト、高色純度な次世代型ディスプレイとして期待されている。今回開発した手法でペロブスカイトLEDの発光効率が大幅に向上することから、ディスプレイ産業分野に大きなインパクトがあるという。また、ペロブスカイトからのレーザー発振特性の向上も期待できることから、医療や通信分野への貢献も期待できるという。

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