「天然の凍結防止剤」をまねた合成ポリマーで、コンクリートの耐久性を高める技術

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コロラド大学ボルダー校の研究チームは、自然界にある不凍タンパク質をヒントに、合成ポリマーを添加することで、コンクリートの凍結融解による損傷を効果的に防止できることを発見した。研究結果は、『Cell Reports Physical Science』誌に2020年5月27日付で掲載されている。

コンクリートが凍結すると、中に含まれる水分も氷となって膨張し、周囲に圧力がかかってコンクリートに亀裂が生じ、損傷を引き起こす。凍結と融解による損傷を防ぐために、1930年代からコンクリートに小さな気泡を入れる手法が用いられてきた。気泡により、氷が成長するのに十分な空隙を形成するという手法だが、気泡の存在でコンクリートの強度は低下する。また透水性が増すため、さまざまな化学物質がコンクリートに染み込み、別の劣化原因にもなる。

一方、南極や北極など寒い地域に生息する生物には、生体の凍結を防止する不凍タンパク質が含まれている。不凍タンパク質は、できはじめの微細な氷結晶の表面に結合して、氷結晶の成長や合体を妨げるが、研究チームはこれに注目した。ただし、コンクリートはpH12~12.5という非常に高い塩基性のため、不凍タンパク質をそのまま利用することはできない。研究チームは、不凍タンパク質と同じ挙動を示し、高pHでも安定なポリビニルアルコールと、毒性がなく丈夫な性質を持つポリエチレングリコールを組み合わせた合成ポリマー(PVA-PEG)に着目した。

この不凍ポリマーは高pHでも安定であり、氷結晶の成長を抑制した。不凍ポリマーを添加して作られたコンクリートは、気泡を加えたものと同等の損傷抑制効果があり、強度が高く、透水性が低く、寿命が長いことが示された。

コンクリートは水に次いで、地球上で2番目に消費量の多い物質だ。コンクリートに必要なセメントの製造工程だけで、世界のCO2排出量の約8%を占めるほど、環境に大きな影響を及ぼす。長期使用に耐えうるコンクリートは、経済的、環境的コストを抑えるために重要だ。

論文の責任著者であり、土木環境建築工学の助教授であるWil Srubar III氏は、この不凍ポリマーを用いた手法について、今後5年から10年のうちに市場参入したいと考えている。

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