ゴムと金属の接着老化に関わる反応の可視化に成功――ゴム材料の長寿命化/再資源化に寄与 名古屋大学ら

名古屋大学は2023年11月7日、同大学大学院理学研究科および同大学物質科学国際研究センター、横浜ゴム、高輝度光科学研究センター、北陸先端科学技術大学院大学の共同研究チームが、ゴムと金属の接着老化に関わる反応の可視化に成功したと発表した。

自動車用タイヤには、構造補強などのために真ちゅうをめっきしたスチールコード(ベルト)が埋め込まれている。真ちゅうの銅とゴムに添加した硫黄が反応して硫化銅層を形成することで、両者が強固に接着する。

しかし、湿度や熱の負荷が掛かる環境では、接着に関わる化合物の種類や分布が変化し、接着力が低下してしまう。このメカニズムの詳細が明らかになっていないことが、ゴム材料の長寿命化や再資源化に向けた研究開発における障害となっていた。

同研究チームは今回、ゴムと真ちゅうの接着モデル試料に対し、材料中の銅の分布やそれぞれの場所における化合物の種類の違いを三次元的に可視化する方法を開発した。

ゴムに真ちゅう粒子を混ぜ込んだ接着モデル材料に対するXAFS-CTイメージング

XAFS-CT(化学イメージング技術の一種)で計測した画像データを解析することで、真ちゅうに元々存在する合金の銅のほか、ゴム中の硫黄と結合した、1価および2価の硫化銅の化学種の分布および量を三次元的に可視化している。

解析した結果、湿熱老化の初期(3日目)において、真ちゅう粒子の周辺に薄く1価の硫化銅が分布している様子が観察された。ゴムとの接着層の形成を示唆している。

14日以降では、真ちゅうの反応が進んで2価の硫化銅が生じ始め、湿熱老化処理の時間に応じて銅の溶出や硫化、拡散が進む様子が確認された。

さらに、ゴム中に含まれる1000個程度の真ちゅう粒子に対して、湿熱老化反応前後での銅の反応を追跡することで、湿熱老化反応における銅の反応プロセスを解析する方法を開発した。

湿熱老化反応による変化を追跡できた802個の真ちゅう粒子に対し、3種類の銅の化学種の量とそれらの分布や広がりの量に関するプロットを作成している。

湿熱老化時間を長くした際に、3種類の銅成分で矢印の大きさと向きが異なり、湿熱老化時間に応じて挙動が変化することが判明。そこで、機械学習を用いて矢印の傾向を分けたところ、5種類のパターンに分類できることが分かった。

これらのパターンは、湿熱老化における銅の反応の仕方の違いに相当する。湿熱老化時間に応じて反応のパターンが変わっていく様子を可視化した。

湿熱老化時間が短い場合、主に1価の硫化銅が増える反応が生じる。一方、湿熱老化時間が3日を過ぎると、接着老化につながると考えられている2価の硫化銅が生成する反応が多く生じた。

(左)可視化した3種類の銅の化学種について、湿熱老化に伴う化学種の反応の仕方やその度合いを矢印(ベクトル)を用いて視覚的に示した図
(右)機械学習により分類した5種類の反応パターンの内訳を示した図

今回の研究結果により、ゴムと金属の間の接着に関わる化合物の種類の分布に加えて、それらの反応の詳細や広がり方を非破壊で可視化して解析することが可能となった。

ゴム材料内部の接着老化メカニズムの可視化や寿命予測に寄与することで、長寿命や再資源化のための研究開発が進むことが期待される。

関連情報

ゴムと金属の接着老化に関わる反応の可視化に成功 ~タイヤの長寿命化に向けた研究開発に活用~ – 名古屋大学研究成果情報

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