東北大学は2020年8月17日、IoTセンサーなど向けに暗所でも常温で発電するデバイスを開発したと発表した。
社会のIoT化が進むにつれて、IoTシステム上で稼働する多数のセンサーへのエネルギー供給が課題となる。明るい場所では太陽光発電による給電が可能だが、暗所では同様の方法が採れないため、これまで熱電発電などの研究が進められてきた。しかし熱電発電では温度差を作り出すために高温熱源が必要であるために、利用可能な場面が限定されてきた。
今回開発した常温発電デバイスは、熱電発電素子と蓄熱部、放熱部から構成されている。熱電発電素子はBi2Te3とSb2Te3の複数の対からなる熱電素子を、量産が簡単なめっきの技術で作製。Si基板で挟み込んだ構造だ。熱電発電素子の片面は蓄熱部に接触し、別の片面は放熱部に接している。このデバイスに温度差を与えるか、または環境の温度が変化した場合、熱が蓄熱部に吸収されるか同部から放熱される。この際に熱電発電素子の両側に温度差が生じて発電する仕組みだ。
原理実証用の常温発電ユニットを建物内部に設置し、半日の環境温度変化に対する発電量を測定した結果、1日の内、朝や夕方などの温度変化が大きい時間帯に発電量も多くなっていることを確認した。また、温度センサーやCPU、無線ユニットを組み込んで、バッテリーなしの状態で30日以上の長期間にわたって温度センサーのデータを外部に送信することに成功した。
今後は、不純物を熱電素子にドーピングすることで発電量を増やす技術を開発するなどで大出力し、早期の実用化を目指す。