- 2024-1-24
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- アンモニア, ゼオライト, ナノ材料, ハーバー・ボッシュ法, モリブデン, 北海道大学, 固体触媒, 東京大学, 極微金属クラスター触媒, 水素, 理化学研究所, 理研, 研究, 窒素, 触媒
理化学研究所(理研)は2024年1月22日、同研究所と東京大学、北海道大学の共同研究グループが、アンモニアを合成可能な極微金属クラスター触媒を作製したと発表した。
アンモニアは、肥料や窒素原子を含む化学製品の原料として用いられる。また近年は、CO2を排出しない燃料としても注目されている。
アンモニアは、鉄の固体触媒を用いた「ハーバー・ボッシュ法」により、窒素分子と水素分子から合成される。合成には150~350気圧下、350~550℃という高圧高温条件が必要となるため、温和な条件で合成できる触媒の開発が求められていた。
同研究グループは今回、ハロゲンが配位した6原子のMo(モリブデン)からなるクラスターを用いた。Moクラスターと同程度となる1nm以下の大きさの細孔を有するゼオライト(多孔質担体)にクラスターを担持させ、水素流通雰囲気下600℃で加熱処理している。
この結果、ハロゲン配位子が全て外れた後でも、6原子からなるMoクラスターが原子の平均数をほぼ保ったまま細孔に取り込まれた。
また、Moクラスターを細孔に取り込んだゼオライトに対し、窒素と水素の混合ガスを流通、反応させた。
この結果、10気圧下400℃では約260時間、50気圧下では200℃でも約520時間にわたって、アンモニアが一定の速度で生成することを確認している。200℃・約520時間での生成は、200℃の反応としては過去最長レベルだという。
Moは、鉄などに比べて窒素-窒素三重結合の切断能が高い。さらに、理論計算により、Moクラスター触媒ではMo原子が協同的に働き、窒素-窒素三重結合を効率よく切断することが判明した。
今回開発した触媒は、特殊な成分を用いずに窒素を比較的低い温度で効果的/持続的に切断可能。また、安全性にも優れる。今後、アンモニア合成での実用化が進むことで、アンモニア燃料の増産につながることが期待される。
また、極微サイズの金属クラスターの確立という研究成果は、ナノ材料分野の研究や応用にも寄与することが期待される。