「退職」回避!? テレワークをしながら“実体験”をも開発に——KDDI研究所 明堂絵美氏

テレワークの普及には、使用者の抵抗感をなくすこと。全体最適化は重要

社会の役に立つものを作ることがモチベーション。「テレワークの研究開発と言われた時はうれしかった」

社会の役に立つものを作ることがモチベーション。「テレワークの研究開発と言われた時はうれしかった」

――テレワークシステムの開発に携わって、特に興味深かったことはありますか。

トライアルをしている複数の女性から「常に写されているので恥ずかしい」という意見があり、使用することに対して抵抗があるようでした。そこで調査や実験をしたり、パーソナル距離について調べたりして、表情は読み取れてリアル感もありながら、恥ずかしくないように、解像度や大きさなどを改良しました。相手側に表示される顔のサイズを変更する機能を追加したところ、好評でした。

このような細かい仕様は、システムの本来的な機能ではありません。でも私は、こういうところが重要だと感じています。機能が素晴らしくても、抵抗感があっては使ってもらえません。トライアルすらしてもらえなければフィードバックももらえません。今後多くの方に使っていただくためにも、抵抗感なく使えるということは、とても重要だと思います。

――テレワークシステムを開発する上で、特に気を付けていることはありますか。

全体最適化です。多くの人が使うものですから、できるだけ情報を集めて分析し、何が全体最適かをよく考えるようにしています。コアとなるアルゴリズムを考えて特許申請を行い、学会やプレスに発表し、サービスをリリースするような華々しさはなく、地道でとても時間がかかりますし、最適化を考えている段階では何の成果も出せません。でも最初の戦略を間違ったら、世の中に普及しないかもしれない。それくらい大事なことだと思うので、時間がかかってもじっくり考えるようにしています。

女性のエンジニアが増えてくれたら、私も楽しい

2歳のみきちゃんは料理に興味があるとか。楽しみながら一緒に食事の支度をする

2歳のみきちゃんは料理に興味があるとか。楽しみながら一緒に食事の支度をする

――どんなことにやりがいを感じていますか。

子どもを持って分かりましたが、仕事をしたい一方で、子どもと一緒にいる時間や教育も大切なのです。女性が働く時代とはいえ、環境はまだ整っているとはいえません。今、子育てと仕事のキャリアを両立させている方は、スーパーウーマンだと思います。

でもテレワークができれば、スーパーウーマンでなくても働き続けることができるかもしれない。働きたい人たち、働かなくてはならない人たちの役に立てる可能性があるということは、大きなやりがいです。

みんなが健康を害すことなく、いきいきと働ける社会になるように、解決策の1つとなる土台を作っていきたいと思っています。

――では、これからどんなことをしていきたいですか。

今はアプリケーションを担当していますが、コアになるアルゴリズムの研究もしたいですね。自分なりに工夫を凝らしたアルゴリズムが組み込まれた製品ができたら、やはりうれしいですから。

もう1つは、戦略的な部分です。今までは5~10年先のことを考えてきましたが、20~30年先を想定して、その中で研究テーマを見つけて、未来デザインをする仕事もしたいです。

――女性に何かメッセージをいただけますか。

女性であることは、体力的なデメリットはあるかもしれませんが、男性とは異なる発想や視点を持っていることはメリットです。まだ足りていない部分だと思うので、女性のエンジニアはもっと増えていいと思います。

ものを作りたい、システムを作りたいという思いがあれば、手法や技術は後からでもどうにかなるので、チャレンジしてほしいです。女性のエンジニアが増えてくれたら、もっと楽しいだろうなと思います。

明堂さんの一日

【fix】20160222_KDDI_Schedule

「おいしいごはんになりますように」小さな手で一生懸命お料理するみきちゃんと、「母の目」で見守る明堂さん。(写真提供:明堂絵美氏)

「おいしいごはんになりますように」小さな手で一生懸命お料理するみきちゃんと、「母の目」で見守る明堂さん。(写真提供:明堂絵美氏)

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