デンキウナギがヒント――将来のインプラントデバイスに応用できる生体適合パワーセル

デンキウナギのように、イオンを選択膜を通して移動させて発電する

アメリカとスイスの大学の共同研究チームが、デンキウナギからヒントを得て、100V以上の電圧を出力可能な、柔軟で透明なパワーセルを考案した。4種類のハイドロゲルから構成され、生体適合性を有することから、インプラント型のヘルス・モニターや投薬ディスペンサー、ペースメーカーなどの分野で応用が期待される。研究チームには、ミシガン大学、フリブール大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者が参加しており、研究成果は、『Nature』誌の2017年12月14日号に公開されている。

「デンキウナギは、何千もの細胞を瞬間的に分極させ、600Vもの高電圧を生成するが、そこには工学的に見ても素晴らしいシステムがある」と、ミシガン大学材料科学科のMax Shtein助教授は語る。デンキウナギの発電器官には、カリウムイオンとナトリウムイオンのどちらかを過剰に保持する数千の区画が交互に配置され、2種のイオンを分離する生体膜により隔てられている。そして獲物を攻撃したり身を守ったりするため電気ショックを発生する必要があるとき、すべての発電器官の生体膜が同時にイオンの流れを生成することで大きな電圧を発生させる。

研究チームは、カリウムイオンとナトリウムイオンの代わりに、一般的な食塩水の成分であるナトリウムイオンと塩素イオンを用い、デンキウナギの発電器官を人工的に再現した。研究チームは、特殊なプリンターを用い、この食塩水ゲルの小さな液滴と、純水のゲルの液滴とをプラスチックシート上に交互に配置されるよう印刷した。次に、イオンを隔てる生体膜に対応するものとして、ナトリウムイオンまたは塩素イオンを透過するが他は通さない電荷選択性ハイドロゲルの液滴を、2番目のシート上に交互に配置した。そして2枚のシートを押しつけることで、食塩水ゲルと純水ゲルの液滴が、電荷選択性ゲルを通して直列に結合され、ナトリウムイオンと塩素イオンは逆方向に移動することで電流が発生する。

課題は何千ものセルを同時に正しい順序で接触させることだが、研究チームは「ミウラ折り」と呼ばれる折り紙技術を利用した。東京大学名誉教授の三浦公亮氏により考案されたミウラ折りは、人工衛星のソーラーパネルの展開などに活用されている。研究チームは、レーザーでミウラ折りの折り目を付けられた平坦なシート上に、4種類のゲル液滴を交互に配置した。このシートを折り畳むことで、すべてのゲル液滴をほぼ同時に正しく接触させることができる。

フリブール大学アドルフ・マークル研究所のMichael Mayer教授は、「この技術は未だ萌芽段階にあるが、将来インプラントおよびウェアラブルデバイスに電力を供給する、毒性のない有効な手段になると考えている。さらに、その先には、体内で生じる自然現象から発電することのできる、生体電気システムに発展する可能性もある」と、今後の研究に期待を寄せている。

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Electricity, eel-style: Soft power cells could run tomorrow’s implantables

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