排熱を使って発電できる――赤外線を捉えて直流に変換する発電デバイスを開発

アメリカのサンディア国立研究所は、シリコンベースの約8.5×8.5mmの薄型デバイスによって熱源から発生する赤外線を捉え、直流に変換するデバイスを開発したと発表した。研究成果は『Physical Review Applied』に論文「Power Generation from a Radiative Thermal Source Using a Large-Area Infrared Rectenna」として2018年5月25日に発表されている。

直近の研究目標としては、放射性同位体熱電気転換器(RTG:Radioisotope Thermoelectric Generator)と呼ばれる放射性同位元素を利用した発電装置の代替だ。太陽光発電だけでは電力が十分に賄えない宇宙ミッション用の電源に、船内システムから出る排熱を熱源として利用できるこの赤外線発電システムを利用することを想定している。

本研究で開発されたデバイスにはアルミニウム、シリコン、二酸化ケイ素などの一般的で豊富に存在する材料が利用されている。デバイス表面にはアルミニウムが毛髪の20分の1ほどの幅のストライプでエッチングされており、これは赤外線を捉えるアンテナとして機能する。表面のアルミニウムとベースのシリコンとの間に、毛髪の1万6000分の1ほどの厚み(シリコン原子約20個分の厚み)の二酸化ケイ素薄膜層がサンドイッチされている。表面のアルミニウムのアンテナから導入された赤外線が二酸化ケイ素の薄膜層へと流れ込んで薄膜層に閉じ込められると、約50兆分の1秒という速さで電気振動を発生する。この振動はアルミニウムとシリコンとの間で電子を非対称に前後に押し、これが整流作用となって直流電流を発生するという仕組みだ。

論文の筆頭著者でエンジニアのJoshua Shank氏によると、「赤外線レクテナ」(rectenna:rectifying antenna)と名付けられたこのデバイスは、一般的な集積回路と同様の製法で作ることができるためスケーラブルで、容易に大量生産できるという。研究論文では、作成したデバイスは840℃の熱源ランプを利用した際に、1平方センチあたり8nWの電力を発生したと報告している。これがどれほどの電力かというと、一般的なソーラーパワー計算機の消費電力は5μW程度だが、これを動かすためにA4紙1枚大程度の赤外線レクテナシートが必要になる。

開発チームは、1次元のアルミニウムストライプに代えて2次元パターンを採用することで赤外線吸収を上げる、より薄いシリコンウエハーを使うことで電気抵抗を下げる、などのアイデアがあるという。そして、より効率的に電力を発生できる赤外線レクテナを5年以内に開発することを目指している。

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