慶應義塾大学は2021年9月24日、短距離通信で大容量の情報を高速で伝送しても通信エラーがほぼ発生しないプラスチック光ファイバ「エラーフリーPOF」を開発したと発表した。
光ファイバは、サーバやコンピュータ機器間でデータを伝送するためのケーブルとして使われているが、研究グループは、通信エラーが発生しない光ファイバとして、現在主流のガラス光ファイバに代わるプラスチック光ファイバの研究を進めている。
研究チームは、先行研究で、プラスチック光ファイバのコア内部にミクロ不均一構造を形成し、前方光散乱を介して効率的なモード結合を引き起こすことによって、光伝送時に生じる雑音や歪みを大幅に抑えられることを発見した。
今回新たに開発されたエラーフリーPOFはこの性質を応用しており、100メートル以下程度の短距離通信であればエラーはほとんど起きないという。研究チームは、エラーフリーPOFを用いて、短距離通信の次世代標準である毎秒53ギガビットのPAM4信号を伝送し、誤り訂正機能を使用しなくてもエラーフリーで伝送することに成功した。
現在、大容量の情報を高速処理する際には、伝送時に生じた誤データをFECなどの誤り訂正機能や波形整形回路で補正する必要があるが、こうした信号処理は通信システムの消費電力を増加させ、通信遅延増大の原因となる。その点、エラーフリーPOFを使えば、このような信号処理が不要となり、消費電力の削減やさらなる情報伝送の高速化につながる。
また、プラスチック製の光ファイバはガラス製に比べて安価で柔軟性があるため、用途の拡大やコスト削減も期待できる。研究グループは、自動運転車やロボティクス、高精細映像の伝送への活用も可能であるとし、エラーフリーPOFは今後の次世代情報産業をけん引するものだとしている。
研究成果の詳細は2021年11月に開催される「プラスチック光ファイバ国際会議(POF2021)」で発表される。