日焼けから肌を守りながら皮膚を修復する、「スーパーメラニン」クリームを開発

ノースウェスタン大学の研究チームは、天然のメラニンを模倣したクリーム状の合成メラニンを開発した。合成メラニンは、日焼けから肌を守るだけでなく、ダメージを受けた皮膚の回復を促進する。研究成果は、『Nature npj Regenerative Medicine』誌に2023年11月2日付で公開されている。

私たちの皮膚や目、毛髪に存在している色素であるメラニンは、細胞を日焼けによるダメージから保護している。メラニンには、紫外線のダメージにより皮膚内に生成するフリーラジカルを中和する働きがある。この合成メラニンは、フリーラジカルを中和する能力が高まるよう、天然メラニンから構造を改変している。研究チームが「スーパーメラニン」のようだと述べるこの合成メラニンは、生体適合性と分解性があり、無毒で、皮膚に塗ると透明になる。皮膚に塗布した合成メラニンは、皮膚表面にとどまり、下層に吸収されることはない。

研究チームは開発した合成メラニンについて、日焼け止めとしての効果を試験した。その結果、皮膚と皮膚細胞をダメージから保護することができた。次に、人工的に水ぶくれを形成させたヒトの皮膚組織を用いて、皮膚への治癒効果を調べた。皮膚に塗布した合成メラニンは、最初の数日間は皮膚自身のフリーラジカル消去酵素の働きを促進し、その後は炎症性タンパク質の産生を抑制することで、免疫反応を促進した。合成メラニンを塗布した皮膚の水ぶくれの治癒率は大幅に向上し、水ぶくれの下の健康な皮膚層は維持されたままだった。一方、合成メラニンを塗らなかった皮膚では、水ぶくれの状態のままだった。

皮膚の一番外側の層である角質層は、体や外界からの信号を受け取り、表皮の下の層とコミュニケーションを取っている。合成メラニンがその表面の炎症を鎮めることで、身体のさらなる炎症は抑えられ、治癒が始まる。つまり、上層を安定させることで、積極的に治癒プロセスに導くことができる。

研究チームは、皮膚の修復促進を目的として、合成メラニンクリームを日焼け止めや保湿剤に応用することを考えている。紫外線を浴びる前でも浴びた後でも使用することができ、皮膚を保護すると同時に、継続的に皮膚を修復する。また、メラニンは重金属や毒素も吸収するが、合成メラニンはこれらの有害物質の吸収も最適化するように設計されている。さらに、メラニンが放射線から生体組織を保護することも知られているため、放射線被ばくによる皮膚炎の効果的治療となり得ると研究チームは考えている。

合成メラニンクリームの臨床応用と有効性に関する試験は進められており、すでに安全性試験で人間の皮膚に刺激を与えないことを確認している。

関連情報

‘Super melanin’ heals skin injuries from sunburn, chemical burns: For Journalists – Northwestern University
Topical application of synthetic melanin promotes tissue repair | npj Regenerative Medicine

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る