- 2024-3-19
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- CariedAway試験, FDA(アメリカ食品医薬品局), JAMA Pediatrics, Ryan Richard Ruff, Tamarinda J. Barry Godín, シーラント, ニューヨーク大学, 学術, 正看護師, 歯科衛生士, 知覚過敏, 虫歯予防法
ニューヨーク大学(NYU)の研究チームは、小学生を対象とした大規模臨床試験において、フッ化ジアンミン銀(SDF)が効果的で安価な虫歯予防法となることを明らかにした。既存の虫歯の悪化を防ぐこともできる。研究成果は、『JAMA Pediatrics』誌に2024年3月4日付で公開されている。
アメリカでは子どもの虫歯予防として、学校でのシーラントを国が支援している。シーラントとは、歯の表面に薄い保護膜を塗布する虫歯予防法で、歯科専門の医療従事者が学校に赴きシーラントを実施している。
一方、SDFはもともと歯の知覚過敏に対してアメリカ食品医薬品局(FDA)に承認された液体の薬品だ。SDFは歯の表面に直接塗布することで、虫歯の原因となるバクテリアを除去し、歯の再石灰化を促進して虫歯の進行を抑制する。シーラントよりも短時間で塗布でき、安価であることが特徴だ。日本でも、知覚過敏の抑制、初期虫歯の進行抑制および二次虫歯の抑制を対象に保険適応されている。
CariedAway試験と呼ばれる今回の臨床試験は、ニューヨーク市の小学生を対象としたもので、約4000人の児童にSDF塗布またはシーラントを実施し、4年間追跡調査を行なった。学校ベースの虫歯予防研究としては、アメリカ最大規模としている。
COVID-19の影響で一時的な中断はあったものの、SDF塗布またはシーラントが年に2回実施された。歯科医の監督のもと、シーラントは歯科衛生士が、SDF塗布は歯科衛生士または正看護師が行なった。なお、どちらのグループの児童もフッ化物バーニッシュ塗布も同時に施されている。
2年間の追跡調査の結果、SDF塗布もシーラントも虫歯を80%予防し、既存虫歯の50%で進行を止めた。また4年後の結果も同等だった。このことにより、SDFが既存の虫歯予防法であるシーラントと同等の有効性を持つことが示された。
論文の筆頭著者であるニューヨーク大学のRyan Richard Ruff准教授は、「今回の研究によりシーラントとSDFの両方が虫歯に対して有効であることが再確認できました。SDFはシーラントに取って代わるものではなく、学校で虫歯予防をサポートするもう一つの有望な選択肢です」と述べている。また、CariedAway試験の副プログラムディレクター兼指導歯科医でもある、ニューヨーク大学のTamarinda J. Barry Godín氏は「これまでのほとんどの研究は、SDFが虫歯の進行を抑制することを示していましたが、今回虫歯を未然に防ぐことが可能であると実証できました」と述べている。
また、歯科衛生士と正看護師がSDFを塗布した児童の治療成績は同等であったことから、歯科専門の医療者ではない学校看護師が、虫歯予防プログラムにおいて重要な役割を果たす可能性も示唆された。