ウェアラブルデバイス向けに繊維状リチウムイオン電池を開発

香港理工大学(PolyU)の研究者たちが、エネルギー密度、曲げ範囲、耐久性のいずれの点においても、既存の曲げられる電池のどれよりも高性能な、繊維状リチウムイオン電池を開発した。その研究成果は、『Nature Communications』に掲載されている。

既存のフレキシブルなリチウム電池の場合、エネルギー密度は200Wh/L以下で、曲げ半径は25mmだ。今回研究チームが開発した繊維状リチウムイオン電池は、エネルギー密度は450Wh/L以上で、曲げ半径は1mm以下を達成している。しかも、1000回以上繰り返し折り曲げても電池容量の低下はわずか、従来のリチウム電池に比べ充放電性能が高速で、寿命も長いという。

今回の開発の中心となるのは、PolyUが独自開発した金属蒸着技術「PAMD:Polymer-Assisted Metal Deposition」だ。これにより、高導電性の金属、銅(Cu)、ニッケル(Ni)を、前処理された布地に均一に蒸着させている。このように製造された金属織物は、低いシート抵抗と大きな表面積を特徴とし、電池の集電装置として機能する。これに陽極と陰極として機能する活物質を添加し、セパレーターや電解質と組み合わせることで、真のフレキシブルなリチウムイオン電池が完成する。

研究チームは、この繊維状リチウムイオン電池に機械的な試験を加え、外部からの力による変形に対して極めて高い機械的安定性、耐久性、安全性を有することを明らかにしている。電池を半分に折りたたんでも、さまざまな角度で捩じっても、その電位は変化しなかった。また、ハンマーで叩き、ハサミで切り、釘を打ちこんでも、発火や破裂することはなかったという。

研究チームを率いたZHENG Zijian教授は、「この繊維状リチウムイオン電池は、医療、インフォテインメント、スポーツ、航空宇宙、ファッション、IoTから、センシングやトラッキングの用途にわたる多彩な次世代アプリケーションへ、有望なソリューションを提供するだろう」と述べている。

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