子育て+仕事をする女性エンジニアの役に立ちたい——メイテックフィルダーズ 前場千春氏

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組み込みソフトウェアの開発に携わる女性エンジニア、前場千春さん。2歳8カ月の大河くんのママでもある。子育てを楽しみながら、一方では、限られた時間でいかに満足されるアウトプットが提供できるかを常に考えている。仕事へのポリシーは、「その場しのぎ」の対応を絶対にしないこと。自分が開発現場にいないときに、問題が発生しない状態を創ることにこだわり続ける。(撮影:築地 久)

組み込み開発は魅力的な仕事

——現在どのような仕事をしているのですか。

私が所属しているメイテックフィルダーズは、エンジニアを正社員として雇用し、お客様先に派遣している会社です。
私もメイテックフィルダーズの正社員エンジニアとして、製造業であるお客様先に派遣されて仕事をしています。仕事の内容としては、入社した年に1年半ほどWebシステムの開発に携わりましたが、その後は組み込みのソフトウェア開発をしています。ジャンルはその時々によって異なりますが、たとえばデジタルカメラとか、白物家電などの開発に携わっています。

派遣であるために、セキュリティの厳しい部分については直接閲覧できない資料などもありますが、仕事の内容は社員の方々と何ら変わりません。逆にいろいろな会社を見られるので、他社での経験が活かせるというメリットがあると思います。

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——今の仕事にどのような魅力がありますか。

やはり、自分が開発にかかわったものが製品になって世の中に出ていくのは、一番の魅力ではないかと思います。
また、組み込み開発はシステム系とは違って、かなりハードウェアよりの深い部分まで理解しなければなりません。何が、どう動いているのかなどを見ながらソフトウェアを作るのは、とても楽しいです。

——組み込み開発の世界では、ソフトウェアは立場が弱いと聞いたことがありますが。

確かにハードウェアに比べると弱いと思いますね。ハードウェアは一度作ってしまうと変更がしにくいので、「ソフトでどうにかしてくれ」ということは少なくありません。製品によっては発売スパンが決まっているので、スケジュール的なしわ寄せもありますね。
それでも魅力的な仕事ですし、可能な限り続けていきたいと思っています。

「残業しなくても、満足していただけるのか」

——残業も多い仕事なのではないかと思います。

残業が必要なシチュエーションがとても多いのは確かです。今はお客様先のご好意で、定時で帰らせていただいていますが、何かあったときに柔軟に残業ができる人も必要です。おそらく全員が私のような境遇の人で構成されているチームでは、プロジェクトが進まないだろうと思います。
これからもっといい働き方が開拓されていくかもしれませんが、現状では女性が働くうえで、そこが一番ネックなのではないかと思います。

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動物が好きで、小さい頃は「ムツゴロウ動物王国」に入りたかったとか。

——産休、育休を経て職場に復帰していますが、不安はありませんでしたか。

不安はすごくありました。産休に入る前は残業が続くこともあったので、「残業をしなくてもお客様に満足していただけるような仕事ができるのか」が、一番不安でした。

産休の時点でいったん契約は終了となりましたが、休みに入る前の私の仕事ぶりをお客様が評価くださったようで、育休明けに「毎日定時でいいので、前場さんにお願いしたい」と言ってくださって、再契約いただくことができました。そのようにお客様から評価いただけたことと、慣れた環境で復帰することができたことは、私にとって大きな喜びでした。

個性が生かせることを学んだ5年間

——阿南工業高等専門学校の出身だそうですが、なぜその道を選んだのですか。

高専は中学を卒業して入る学校ですが、その時点では何かをしたいと思っていたわけではありません。

ただ、そのまま普通科の高校に行っても、大学進学のときに自分のしたいことが見えるかどうか分らないと思ったので、専門的なことが身に付く学校に行った方がいいと思いました。5年間の学校で、3年で高校卒業資格が取れるので、自分には合わないと思ったらその時点で大学に進めばいいと。
学科は、ソフトウェアも含む全般的な工業のことを学ぶ「制御情報学科」で、電気工学と機械工学も学びました。

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「ずっと動かなくて悩んで……それが解決するとすごくうれしい」

——学校の勉強で一番苦労したことは。

ロボット実習ですね。同じ学科の約40人を、3人ずつのチームに分けて、3カ月くらいかけてテーマに沿ったロボットを作って競う、コンテストのようなものです。私のときは、「ピンポン球を拾って、高いところにあるゴールに入れる」というテーマで、私たちのチームはらせんで巻き取って持ち上げるという仕組みを考えました。結果は、途中で球が詰まってしまって、最下位に近かったと思います。
仕組みを考えること、それを作ることだけでなく、チームワークも難しかったですね。グループでの物事の進め方も学んだ実習でした。

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「男性に囲まれて仕事をしているので、同化してしまわないようにしないと」

——5年間の学生生活で勉強以外に得たものは。

とてもいい仲間との出会いに恵まれて、今でも学生時代の友人や先輩とはお付き合いがあります。
また、普通の高校などとは違う、ちょっと特殊な環境で過ごしたことで、他人と一緒ではないことや、自分の個性が生かせることが分かった5年間だったかなと思います。

一人でゆっくり買い物したい!

——今は毎日、仕事をしながら家事と子育てをしているのですよね。

そうですね。
朝は6時過ぎに起きて、朝ごはんを作って、自分の支度を済ませて、子どもを起こします。自宅と保育園とお客様先は自転車で移動できる距離なので、8時15分ごろ家を出て、自転車で子どもを保育園に送り届け、そのまま会社に行くと、9時5分前ぐらい。17時半まで仕事をして、保育園に迎えに行き、18時半ごろ帰宅します。子どもにご飯を食べさせて、お風呂に入れて、主人が帰ってきたら夕食を食べて、10時ごろまでに子どもを寝かしつける。それからまた、家のことをする…… こんな感じですね。

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大河くんを抱っこしたままインタビュー。前場さんの毎日を象徴しているよう。

——忙しいですね。ご主人は協力的ですか。

洗濯は好きなようで、ときどきやってくれます。
あれもやっていない、これもやっていないといって、1日が終わる日々ですが、家事をおろそかにしても、主人は「文句は言わない」という協力の仕方をしてくれています。

子どもが寝てから、テレビを見たり、少し夜更かしをしたりするのが、ちょっとしたリフレッシュです。時間ができたら、一人でゆっくり、自分のための買い物をしたいですね。

後で後悔しない対策を選ぶ

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ポジティブ、向上心、責任感…… そんな言葉がぴったりの前場さん。

——今までで影響を受けた人はいますか。

最初の仕事のリーダーは女性で、結婚してお子さんがいらっしゃる方でした。仕事と家庭を両立している姿はもちろんですが、仕事に対する考え方などもすごく影響を受けたと思います。女性だったこともあって、自分が目指す、将来的にこういう風になりたいなというイメージがしやすかったですね。

——では、仕事をするうえでの自分なりのポリシーはありますか。

「その場しのぎ」をなるべくしないように心がけています。何か問題があったときに、その場だけで解決するのは意外と簡単なのですが、後で同じことが起こったりして後悔することが多いですから。特に今は定時で帰らせていただいているので、自分がいない時に同じ問題が起こると、ご迷惑をおかけすることになってしまいます。上司と相談しながら、なるべく恒久的な対策、のちのち影響を与えないような方法を選ぶようにしています。

——いろいろな資格も取得していますね。

そうですね。今までは2~3年に1つぐらいのペースで、資格を取得してきました。子どもが生まれてからは、まだ取得していないのですが、自分のステップアップ、レベルアップにもなるので、またチャレンジしたいと思っています。

女性の目を引くような、キラキラ輝くものを作ってみたい

——今後やっていきたいこと、作ってみたいものなどはありますか。

今はまだ、家庭と仕事のリズムをつかむために、目の前のことを見ている状況ですが、もう少し慣れて、自分の後輩にも目を向けられるようになったら、自分と同じように結婚して子育てをしながら仕事をする女性のエンジニアが増えるように、役に立てたらいいなと思っています。

作ってみたいものは、具体的に「これ」というものはありませんが、母親の視点で工夫してみたり、女性の目を引くような、キラキラ輝く製品を作ってみたいと思います。

——最後にメッセージをお願いします。

正直なところ、エンジニアは女性が働き続ける職業として、今はまだとても向いているとは言えないかもしれません。実際、私が仕事をしている職場では、女性は1割もいないと思います。でも女性の方にこの職業にもっと入ってきていただくことで、女性のシェアが高まり、より働きやすくなり、実績もどんどん積んでいくことができると思うので、どんどんチャレンジしていただきたいと思います。

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