【半導体メーカー編】求人ニーズ急騰中!半導体製品の生産工程を考える、プロセスエンジニアという仕事

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メイテックネクスト エレクトロニクスグループ マネージャ 筧 隆志氏

半導体業界に関する業界動向、転職市場動向をお伝えする全3回の連載です。第1回の記事では、世界が見舞われている半導体不足がどのようにして起きたのか、半導体業界の現況と求人動向の概観を、エンジニア専門の転職支援会社メイテックネクストの代表取締役社長・河辺真典氏に伺いました。

続く第2回は、半導体メーカーにおいて特に求人ニーズが高いプロセスエンジニアという職種にフォーカスし、どのような仕事なのか、やりがいや求められる知識・スキル、転職の可能性について、メイテックネクストのエレクトロニクスグループ マネージャで、電気系エンジニアとしての経験を持つ筧 隆志氏にお聞きしていきます。(執筆:畑邊 康浩、撮影:編集部)

1mmの100万分の1、ナノスケールの世界で生産工程を考える仕事

──半導体のプロセスエンジニアとはどのような仕事なのでしょうか?

[筧氏]前回、半導体業界における企業の区分は、半導体製品をつくる「半導体メーカー」と、半導体製品をつくるためのツールである製造装置をつくる「半導体製造装置メーカー」の大きく2つに分けられるとお伝えしました。ここでは、半導体メーカー側のプロセスエンジニアについてお伝えします。

「プロセス」という言葉は耳慣れないため、具体的な仕事内容がイメージしにくいかもしれませんがプロセスエンジニアとは、生産工程を考えるエンジニアのことなのです。

生産ラインを設計し、確立していく生産技術エンジニアの仕事内容と似ていますが、加工される原材料の選定を含め、製造方法、工程の順番などを考えるのがプロセスエンジニアの特徴です。求められる半導体製品の仕様をクリアしながら、より低いコストで高品質な半導体を生産できるプロセスを設計します。また、生産ラインが稼働し始めた後、ラインの保守やメンテナンスをしたり、新たな課題を改善することもプロセスエンジニアの仕事です。

料理で言うところの「レシピ」を考える仕事だと思っていただくとよいかもしれません。どのような食材を用意し、どのような形に切るのか、下ごしらえはどうするか、味付けはどうするか、煮るのか、焼くのか、それとも蒸すのか、どのように盛り付けるのか──こうした料理の一連のプロセスを考えるのと、同じようなものです。

もう一点、半導体業界のプロセスエンジニアの特徴は、製造する対象のサイズ感がナノメートル(nm)というものすごく小さいスケールだということです。だから製造工程を直接目で確認することはできませんし、人の手が入ることも一切ありません。全ての工程に、作業を自動で行う製造装置が必要になります。したがって、製造装置メーカーとの協業もプロセスエンジニアの重要な仕事となります。

回路を形成しチップをつくる「前工程」、部品として扱える状態にする「後工程」

──半導体の生産工程は100以上あるということですが、大まかな区分けなどはあるのでしょうか?

[筧氏]半導体の生産工程は、まず「前工程」と「後工程」の大きく2つに分かれます。

前工程は、ウエハーと呼ばれる丸い円盤状の板の上に回路を形成する工程です。1枚のウエハーにいくつもの同じ回路を形成します。

後工程は、そのウエハーを「チップ」と呼ばれる形に切り出すダイシングという工程から始まり、製品として出荷できる状態、皆さんも見たことがある小さな黒いチップに収めて部品として扱える状態にしていく工程です。

前工程と後工程の最も大きな違いは、扱うもののサイズ感です。前工程はナノスケールの肉眼では見えないような世界ですが、後工程はミリメートルの単位になります。

非常に小さいナノ単位を扱う前工程では、パーティクルと呼ばれる“塵”が問題になります。1ミクロン(μm)の塵が1つあっても人から見ればどうということはありませんが、ナノメートル単位の半導体にとって、1ミクロンのパーティクルが混入することは大問題なのです。この課題に対するケアが重要になるのが前工程です。

前工程も後工程も、いくつもの工程から成り立っています。したがって、1人のプロセスエンジニアが生産プロセスを最初から最後まで一人で見るわけではなく、それぞれ担当する工程が違っていて、分業しながら一連のプロセスをつなげていくことになります。

従来は、チップを作る前工程こそが技術革新の進む領域でした。半導体の領域では、どれだけ微細な加工ができるかを表す「線幅(回路幅)」という言葉がありますが、これがどんどん小さくなって、現在は2nmや3nmというオーダーになってきました。いわゆる「ムーアの法則」というもので、「微細化」が半導体の性能を高める源だったのです。

ところが最近では、半導体製品の性能を高めるアプローチが「3次元(3D)化」に移りつつあります。3次元化とは、これまで1枚のチップを平面に並べていく作り方をしていたのに対し、複数のチップを縦に重ねていく作り方のことを言います。実はこの3次元化を行うのは後工程です。そのため現在は後工程の方も、技術革新が進むフィールドとなっています。

製造工程の最適化のために、仮説、実験、検証を繰り返し課題解決に向き合う

──プロセスエンジニアの仕事内容ややりがい、面白味を教えてください。

[筧氏]先ほどお話したように、前工程ではパーティクルが問題になります。パーティクルが混入しないようにクリーンルームに製造装置が置かれ、その調整やメンテナンスで人が入るときは防塵服を着て作業をしています。

そこでチップが製造される一連のプロセスを設計し、最適化していく役割を担うのがプロセスエンジニアです。仕事では緻密な作業がありますし、科学的な知識も必要です。例えば量子の世界における技術に興味がある人にとっては、没頭できる仕事だと思います。

ただ、防塵服を着るのは実際の工場での話で、プロセスエンジニアがクリーンルームに入ることはほとんどありません。実態としては仮説を立て、実験と検証を繰り返す、研究職さながらの仕事です。試作品を解析し、想定している通りのものができなければ問題を特定する。問題を解決するために再度課題を設定して、そこに対して材料を変えてみたり、加工のスピードや工程の順序を変えたりと試行を重ねていきます。

またその過程では、企画開発、デザインなど社内の他部署と連携したり、製造装置メーカーと協力しながら、最適な生産プロセスの実装に向けてPDCAサイクルを回していきます。調整事も多いため、コミュニケーション力も必要になります。

ずっと技術開発の最先端で仕事ができる点は研究職さながら

[筧氏]もう一つ、常に技術開発の最先端に触れられる点も、プロセスエンジニアのやりがいと言えるでしょう。

半導体製造に「理想的なプロセス」があるとしたら、そこに至ることは現時点ではまだまだ「夢」レベルの話なのです。

プロセスエンジニアが取り組む仕事のテーマ・課題の粒度は様々です。特定の箇所に出る不具合の解消という現実に即したテーマになる時もあれば、新しい技術や素材を検証する基礎研究に近いような仕事もあります。あるいは、次世代の製品のプロセス開発に一から取り組むような長期的な仕事もあります。そういった新しいテーマや課題が次から次へと生まれてきて、尽きることがありません。

そのような状況は技術開発の最先端にいるからこそ経験できることで、技術革新の余地がなくなったいわゆる「枯れた技術」の領域にいる人から見るととてもうらやましい話だろうと思います。研究職に近い仕事なので、物事を突き詰めたり、理論を解明したりするのが好きな方には非常に向いていると思います。

物理現象への興味、論理的思考が求められる

──プロセスエンジニアにはどのような知識やスキル、資質が求められますか。

[筧氏]プロセスエンジニアは、様々なトライアンドエラーを重ねる中で、実際に起こっている物理現象を理解し、そこから生まれる課題に対して仮説を立ててクリアしていかなければいけません。そういう意味では、理系出身であることは前提になります。

プロセスエンジニアは特に、原材料の選定も行いますし、工程の中には「切る」とか「削る」だけではなく化学的な処理を行う工程もありますので、物理現象の領域に興味・関心がある人なら尚よいでしょう。

また、論理的な思考ができることも必要です。例えばある問題があって、その問題が発生する原因がいくつか考えられるという時に、その可能性を洗い出し、ロジックツリーを作った上で実験計画を立てて、一つ一つ可能性をつぶしていくわけです。これができなければ、行き当たりばったりの試行錯誤になってしまい、なかなか問題の解決に至ることができません。この辺りは、企業の採用面接でも問われるポイントです。

人材不足感が高い今は、未経験からプロセスエンジニアへ転職するチャンス

──最後に、現在のプロセスエンジニアの求人動向について教えてください。

[筧氏]プロセスエンジニアの仕事は、生産ラインを新しく立ち上げることがメインです。連載第1回の記事でもお伝えしたように、現在、世界的に半導体製品の需給がひっ迫している状況にあり、市場からは新しい製品も求められています。

これに対応するため、現在はプロセスエンジニアの求人ニーズも非常に高まっています。これまで、プロセスエンジニアの中途採用においては、プロセスエンジニアの実務経験があることは前提であり、企業が求める工程の経験・スキルも求められてきました。

しかし、需給がひっ迫している状況下では、例えば前工程の求人に対しては、細かい工程の指定はなく「前工程経験者であればいい」といった具合に、条件が緩和されてきています。さらに現在では、前工程でも後工程でも構わない、理系出身で物理現象に興味がある人なら可、という求人も出ています。

また、いきなりプロセスエンジニアとして働くのが難しい人でも、アシスタント的なポジションからスタートし、仕事の仕方や知識を身につけながらプロセスエンジニアにステップアップしていくキャリアの道筋もあります。

ですから、経験者はもちろんのこと、異業種・異職種からプロセスエンジニアにチャレンジしたい人にとって、今が転職のチャンスだと言えるでしょう。

次回、第3回は「半導体メーカー編」、第3回は「半導体製造装置メーカー編」として、具体的な転職事例や転職市場動向をご紹介していきます。


筧 隆志(メイテックネクスト 電気・電子・半導体分野 コンサルタント)
電気系エンジニアとして半導体製造装置の開発業務に携わったキャリアと、8年の海外赴任で得たグローバルな視点から、皆様と企業との最適なマッチングを実現したいと考えています。短期的にだけでなく、長期的にも良かったと思えるような転職をして頂けるように、精一杯支援致します。



取材協力

メイテックネクスト


ライタープロフィール

畑邊 康浩
編集者・ライター。語学系出版社で就職・転職ガイドブックの編集に携わった後、人材サービス会社で転職情報サイトの編集に従事。2016年1月からフリーランス。主にHR・人材採用、テクノロジー関連の媒体で仕事をしている。


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