東北大と慶大など、銅に音波を注入することでスピン流を生成

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SAWフィルター素子の構造(a)、レイリー波による交流スピン流生成(b)、交流スピン流による磁気量の変化とレイリー波振幅の減衰(c)、磁気量変化の発生によるレイリー波の振幅減衰量(d)

東北大学と慶応大学らの研究グループは2017年8月18日、銅への音波の注入により電子の持つ磁気の流れ「スピン流」を生成し、磁石の磁気量を変化させることに成功したと発表した。

磁気は、スピンと呼ばれる物質中における電子の自転運動を起源とする。スピンはミクロなスケールの現象だが、物質を回転させるなどのマクロなスケールの運動によって発生させることも可能だ。このマクロな角運動量とミクロな角運動量の変換は、約100年前にアインシュタイン、ドハース、バーネットによって実証されたが、現状の技術では微弱な磁場しか得られず、デバイスに応用するための研究はほとんど行われていなかった。

一方、2013年に室温で磁気を持たない銅やアルミニウムなどの金属でも、物質に回転を与える音波を使うことで、金属からスピン流を生成できるとした理論が発表された。しかし、音波による回転は、空間的に不均一で、時間的に回転方向が変動するため、作られるスピン流も同様に激しく変動する。そのため、スピン流は検出が難しく、これまで実験的な検証が行われてこなかった。

研究グループは今回、銅に音波の一種であるレイリー波を注入できるSAWフィルター素子を作製。銅に磁気を持つニッケル・鉄合金を重ねて貼り付けることで、銅からニッケル・鉄合金方向へスピン流が流入できる構造だ。流れ込んだスピン流は、ニッケル・鉄合金の磁気量を変化させる能力があり、レイリー波のエネルギーの一部は、磁気量の変化に利用される。

研究グループは、このSAWフィルター素子に、さらに磁場を使用。レイリー波と磁気量の変化の周波数を一致させたとき、レイリー波の振幅が大きく変化する現象を発見した。この現象は、銅を取り除いたり、銅とニッケル・鉄合金の間にスピン流を通さない酸化シリコンを挟むとほぼ消失。理論を実験的に証明したとしている。また、銅を厚くすることで磁気量の変化を増加できることも発見した。

今回用いたSAWフィルター素子は、スマートフォンなどに広く搭載されているため、情報記録やデジタル情報処理を行う磁気デバイスの省電力化が見込まれるとし、また磁石や貴金属を必要としないため、レアメタルフリー技術として貢献できると説明している。

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