ドイツと日本、EV開発にかける「熱量」の違い――東京モーターショー2017

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東京ビッグサイトで開催中の「第45回東京モーターショー2017」。fabcross for エンジニアが実施した製造系エンジニアの意識調査では、「興味・関心を持っているテーマ」のトップは「電気自動車」(56.5%)となった。各自動車メーカーが電動化・EVシフトへの速やかな対応が迫られているという情勢も、EVへの関心が高まっている理由のひとつと思われる。

今年になってイギリスやフランス、中国などが続々とガソリンやディーゼルエンジン車の将来的な販売禁止を打ち出しているが、その背景には各国の主要都市における深刻な大気汚染がある。今回の東京モーターショーに参加したメーカーの展示では、特にドイツ勢のブランディングが印象的だった。EVシリーズに専用ブランドやモデルネーミングを与え、ユーザーにパワートレインの選択肢を増やすという明確な意思が感じられる。

フォルクスワーゲン 「I.D. BUZZ」

ディーゼルエンジンの排ガス不正という不祥事でEVシフトを加速させた張本人ともいわれるフォルクスワーゲンは、新しいEVを「I.D.ファミリー」として展開する。I.D.ファミリーは、同社が「MEB(Modular Electrification Toolkit)」と呼ぶ新しい車両アーキテクチャーをベースにした次世代型EVシリーズのことで、コンセプトミニバス「I.D. BUZZ」はそのひとつだ。

同社によると、I.D. BUZZは2022年の生産が決定している市販化予定モデルだ。1960年~1970年代に製造され、今でも世界に根強いファンをもつワーゲンバス「Type 2」を彷彿とさせるデザインのミニバスだ。

フロア下にバッテリーを格納するためかフロアは高めだが、フラットなためレイアウトの自由度は高い

MEBプラットフォームでは、タイヤはボディの四隅に配置され、前後の車軸の間のフロア下にフラットな駆動用バッテリーを搭載する。I.D. BUZZの内部をみると、シンプルな操作系統、フラットなフロア、そして配置の自由度の高そうなインテリアなど、まさにワーゲンバスの特徴を最新技術でうまく再現しているのがわかる。

同社では2025年までにフォルクスワーゲングループ全体で30モデル、年100万台のEVを販売するという目標を掲げており、それを実現するためのEV専用プラットフォーム開発を着実に進めていると思われる。

現行Golfベースの「e-Golf」。充電ポートは日本向けにCHAdeMO対応済みだ

I.D.ファミリーが登場するまでは現行車ベースのEVを導入する。そのひとつが現行Golf VIIをEV化した「e-Golf」だ。海外ではすでに販売されているモデルだが、国内では35.8kWhに増強したバッテリーを搭載したモデルを投入する。

Audi「Elaine concept」。EVになってもAudiの代名詞といえるQuattroのパフォーマンスを追求するという

フォルクスワーゲングループのAudiは「Elaine concept」を展示、完全自動運転を実現する「Audi AI」を搭載するコンセプトカーだが、パワートレインは最大370kWを発揮する前後2基のモーターを搭載するEVモデルだ。

メルセデスベンツ「EQA」。Cセグメントのエントリーモデルに相当する

メルセデスベンツも、EVモデルには専用のネーミング「EQ」を与える。その最新コンセプトカー「EQA」は、同社の「A-class」シリーズに相当するボディに、前後2基合計出力200kWを超えるモーターと60kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は約400kmを実現するという。

メルセデスベンツ「GLC F-Cell」。水素燃料電池とEVを組み合わせたPHEVモデルだ

メルセデスはまた、水素燃料電池を搭載したPHEV「GLC F-Cell」も展示している。ガソリンやディーゼルではなくFCV+EVという組み合わせによりゼロエミッションを実現し、さらに水素ステーションの不足も補うのが狙いだろう。こうしたところからも、ユーザーに多くの選択肢を用意するための様々なオプションの技術検討を続けていることがうかがえる。

smart 「Vision EQ」。フロントグリルにはメッセージが表示できる

メルセデスはsmartブランドからもEQを展開し、2人乗りのコンセプトカー「Vision EQ」を発表している。こちらはカーシェアリングを念頭においたシティコミューターというデザインだ。完全自動運転車をコンセプトとし、車室内にはステアリングやペダル類は見当たらない。

「smart forfour electric drive」。ベース車同様、EVユニットもルノーとの共同開発だ

smartブランドのもう1台は「smart forfour electric drive」。こちらは市販予定モデルで、ベースとなった「smart forfour」同様の後輪駆動だ。リアアクスル上に置く出力60kWのモーターと17.6kWhのバッテリーで航続距離は約160kmだ。

BMW 「i3」。EVの弱点である航続距離を伸ばすことができるレンジエクステンダーも搭載できる

ドイツ勢の最後は、EV専用モデルコードを持つ「BMW iシリーズ」を販売するBMWだ。EVの「i3」のモーターは125kW、250Nm、バッテリーは27.2kWhで航続距離は200キロ。さらに発電用ガソリンエンジンを搭載して航続距離を伸ばすレンジエクステンダーを搭載したモデルもある。

BMWは、先のフランクフルトモーターショーで「i5」に相当すると推測されるコンセプトEV「vision dynamics」を発表しており、今後BMW iシリーズの拡充を進めると思われる。

「NISSAN IMx」。FFのリーフとは異なるツインモーター4WDだ

対する国内メーカーはというと、グローバルに販売する初の量産EV「リーフ」で先行する日産は、クロスオーバーコンセプトカー「NISSAN IMx」を展示する。NISSAN IMxは高出力モーター2基を前後に積み込んだツインモーター4WD。EV専用のプラットフォームを採用し、最高出力320kW、最大トルク700Nmを誇る。最大航続距離は600kmと、新型リーフを優に上回るスペックをうたっている。

「リーフNISMOコンセプト」

同社はまた、2世代目となった新型リーフのNISMOバージョン「リーフNISMOコンセプト」も公開する。NISMOの専用サスペンションや、瞬発力を高めるようEVコントロールユニット(VCM)をチューニングするなど走りの楽しさを追求したモデルだ。

「MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT」。トリプルモーター方式のクロスオーバーSUVだ

日産同様EVで先行する三菱は、得意とするクロスオーバーSUVとEVを組み合わせた「MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT」を発表している。フロントに1機、リヤに新開発の「デュアルモーターAYC(Active Yaw Control)」を搭載したトリプルモーター方式の4WDシステムを採用する。これは同社の「アウトランダー PHEV」に搭載するモーター2基の「TWIN MOTOR 4WD」を発展させたシステムといえるだろう。

トヨタ 「Fine-Comfort Ride」

一方で、初の量産FCV「MIRAI」を発売、FCVをゼロエミッションの戦略とするトヨタは、コンセプトカーとしてFCV「Fine-Comfort Ride」と2020年東京オリンピック・パラリンピックを目指して2018年発売予定のFCバス「SORA」を出展するなど、FCVへの取り組みを具体的に打ち出している。

トヨタ「TOYOTA Concept-愛i(コンセプト・アイ)」

EVとしては、AIを搭載したコンセプトEV「TOYOTA Concept-愛i(コンセプト・アイ)」シリーズを発表する。4人乗りの「TOYOTA Concept-愛i」は航続距離300km、2人乗りの「TOYOTA Concept-愛i RIDE」は航続距離100~150kmとしているが、そのネーミングの通り、EVというよりはAI化に重点を置いたコンセプトカーで、EVのメリットや具体的なコンポーネントに踏み込んだ内容はないようだ。

「TOYOTA Concept-愛i RIDE」。2人乗りのシティコミューターだ

コンセプトカーにも関わらず、航続距離も他社の現行EVにも及ばないスペックを掲げており、EVで主戦場を戦う意図は無いようにも思われる。

「DN PRO CARGO」。フラットなフロアが使い勝手の良さをアピールする

トヨタ傘下のダイハツは、EVのマルチユースバン「DN PRO CARGO」を展示。低重心、低床というEVならではの利点を強調したコンセプトモデルだ。VWのI.D.BUZZが注目を集めたように、コンポーネントのレイアウトの自由度が高いというEVのメリットを生かせば、ワンボックスや商用車を魅力的にすることができるという一例だ。

スズキ 「e-SURVIVOR」。ラダーフレームでEVコンポーネントを支え、アウトドア的なデザインを重視したボディを載せている

スズキは、コンパクトSUV「e-SURVIVOR」を発表する。前後のアクスルにモーターを配するデュアルモーターアクスルユニットを採用するEVで、ボディを支える骨格に強靭なラダーフレームを使うことで、自由度の高いボディデザインをEVで実現するというコンセプトモデルになる。

すでに量産EVを市販する国内2社を除き、明確にEVシフトを打ち出しているのがホンダだ。ホンダは、「Urban EV Concept」、「Sports EV Concept」、「NeuV」の3つの異なるEVコンセプトカーを展示している。

ホンダ 「Urban EV Concept」

「Urban EV Concept」は、「EVモデルの量産化に向けてのHondaの回答だ」という踏み込んだ説明に加え、新開発のEV専用プラットフォームの採用にも言及する。2019年には欧州での販売を目指すとしており、市販化を前提としたモデルといえるだろう。

「Sports EV Concept」。全体的なレトロ感とハイテクの融合が独特の魅力を発している

今回ワールドプレミアとなった「Sports EV Concept」は、Urban EV Concept同様EV専用プラットフォームを採用する。曲線で構成される丸みを帯びたデザインは、同社のスポーツカー「NSX」のようなシャープなフォルムとは異なる、往年のホンダを感じさせる親しみを感じる。技術的な検討はこれからだろうが、ぜひ市販化を期待したいEVだ。

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