自動車業界と化学業界、職場としての違い――製品と材料、重視するのはどちらか[クルマ技術の今]

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~ 自動車業界の技術トレンドを各分野から見る ~

本記事は、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・甲斐 由美氏への取材記事です。自動車業界の技術やキャリアのトレンドについて、機械系・電気系・ソフトウェア系・化学系といった専門分野別に考え、エンジニア市場の変化、求められるマインド・専門性など、エンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。

今回は、化学系エンジニアが働く環境としての自動車業界と化学業界の違いについて、聞いてきました。


――化学メーカーと自動車関連のメーカー、化学系エンジニアの勤め先として、職場環境や働き方などの面で、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

[メイテックネクスト 甲斐 由美氏]まず自動車業界は、「製品ありき」です。「新たに開発する製品の要件を、どんな材料を使って満たすか」と考えることになります。

そうした業務の中で特に必要とされるのは、化学が専門ではない自動車業界のエンジニアと化学メーカーで働くエンジニアとをつなぐブリッジ能力でしょう。

自動車業界のエンジニアに向けて、「この材料ではこれはできるが、あれはできない」とポイントを押さえながら説明する能力は欠かせません。逆に化学メーカーの担当者に対しては、研究開発中の製品に関する情報のうちごく一部しか開示できない中でも「こういう材料が欲しい」とオーダーして、納品された材料が要件に見合うか正確に評価する能力も必要とされます。

もう1つ、両者を比べるとチームの規模が違います。化学メーカーでは、大手でも開発部門に40人もいたら、かなり大きなチームでしょう。そこからさらに分かれますから、同じテーマを一緒にやっているエンジニアの人数は、わずか数人になるはずです。

一方、自動車業界は、小規模なプロジェクトでも軽く40人を超えるエンジニアがかかわります。化学メーカーとはプロジェクトの進め方も異なります。新しい環境に刺激を受け、新しい発想が生まれることもあれば、新しい環境になじめず戸惑ってしまうこともあるかもしれません。

自動車業界と化学業界、どちらが向いているか考えるための3つのポイント

――化学メーカーから自動車業界に転職して、成功しやすいのはどんなタイプの化学系エンジニアでしょうか?

[甲斐氏]「要求された材料が実際に使用されるシーンを見たい」「自分の素材を使って、社会的に影響の大きな自動車のような製品を作りたい」といったところに働きがいを感じられる人でしょうか。

化学メーカーで基礎的な研究を突き詰めていくのも非常に奥深い仕事ではありますが、「自分の作ったものがどう使われるか」がなかなか見えてきません。潜在的に「『自分の作ったものがどう使われるか』を見てみたい」という気持ちを持っているエンジニアは、化学メーカーにはたくさんいると思います。

自動車業界では、材料を選定してものづくりを推進する側になりますから、こうした気持ちを抱えていた化学系エンジニアにはモチベーションが湧いてくる職場になると思います。

もう1つ、化学以外の知識、例えば機械や電気など、専門外のことであっても積極的に興味を持って取り入れていけるタイプのエンジニアは自動車業界に向いています。

前回お話した「電動化が進むにつれて、電子部品まわりで電気化学的な反応が生じて、何らかの不具合が出てくる」といったリスクに対応するには、複合的な知見が求められることになります。

自分の専門外のことであっても面白がって、多様なことに取り組めるエンジニアの方が自動車業界では活躍できるでしょう。

また、以前から使われている材料も含めて、材料のトレンドを分析して目利きができるエンジニアも活躍できます。

自動車業界は他の業界以上に、量産性やコストダウンを重視します。「新素材だから採用しよう」と判断することはまずありません。新素材が最適な材料であれば採用しますが、コスト・生産性・許容スペックの観点で既存材の方がよければ既存材を採用するのが当たり前の業界です。

ですから、特定の材料そのものにこだわっているエンジニアは、自動車業界には向いていないかもしれません。長期的なスパンで研究に取り組める一部の研究所を除いて、自動車業界は「材料ありき」ではなくて「製品ありき」で考えますから。


甲斐 由美(メイテックネクスト 化学・素材・バイオ分野 コンサルタント)

<メッセージ>
私はこれまで、企業での人事を中心に、マーケティングや会社の立ち上げなど、さまざまな仕事を経験し、多くのエンジニアの方と接してきました。
今の職場や仕事に疑問を抱く時、また新たな挑戦として転職をひとつの選択肢として考える機会は、一度ならずご経験されていると思います。
同じく転職を経験している者として、また人事として数百人の採用、育成に携わってきたアドバイザーとして、ぜひ貴方の未来をお手伝いさせてください。 ご連絡、おまちしております。


取材協力先

メイテックネクスト
メイテックネクスト分野別コンサルタント

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