目に見えない極小樹脂部品を切削、世界最高峰の微小径ドリル、段取り作業を2μm以内で再現――品川・足立・板橋区の光る技術[第22回 機械要素技術展]

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「第22回 機械要素技術展(M-Tech)」が2018年6月20~22日、東京ビッグサイトにて開催された。

東京23区の自治体ブースにスポットを当てたM-Techレポートの前編では葛飾区、荒川区、墨田区の3区を紹介した。後編では品川区、足立区、板橋区を紹介していく。(執筆:馬場吉成)

ITが台頭するも――京浜工業地帯発祥の地、品川区

23区南部に位置する人口約39万人の区。オフィスも多いが工場も多い

後編最初に紹介するのは品川区だ。オフィス街のイメージが強いが、京浜工業地帯発祥の地。今も区内には多くの工場があるものづくりの街だ。業種としては金属製品、生産機械器具、印刷、電気機械器具、プラスチック製品などが多い。

IT企業と製造業のコラボにも積極的だ

近年は大崎・五反田周辺を中心に、IT企業が増えて製造業の比率は下がりつつある。ただ、品川区ではIT企業と製造業を融合させたものづくりを積極的に推進している。例えば、ベンチャーや大手企業が交流する場として、3Dプリンターを備えた工房を持つオープンラウンジを設けるなど、新しいものづくりの形を提供している。

自社製工具を使って極小樹脂パーツを切削加工

品川区で紹介するのは、伸光製作所の樹脂切削加工製品。肉眼ではよく分からないレベルの極小樹脂素材パーツが、高精度で切削加工されている。医療機器などに多く使用される部品だ。

拡大すると小さな穴も開いている

樹脂素材は切削加工時の熱で膨張しやすく、溶けて工具にこびりつくこともある。切削による高精度の加工が難しい素材だ。伸光製作所では、樹脂の専門業者としての豊富な経験と技術で高精度な加工を実現している。

製品に合ったバイトを自社製作

特殊な加工となるため、市販の切削工具(バイト)では加工できない。今までの経験や知識を基にして、製品に合ったバイトを自社で削って製作している。また、寸法精度なども厳しく検査しており、高精度・高品質の製品を安定して提供できる環境が整っている。

ポリエチレン、ナイロン、ABS、PEEKなどさまざまな樹脂に対応

工場の数はトップクラス。小さな工場の技が光る足立区

23区最北端に位置する人口約69万人の区。マンション開発などで近年は人口増加傾向

続いて紹介するのは足立区。近年はマンション開発などで人口増加傾向にあり、工場の数は23区内でトップクラスに入る製造業の街だ。大工場は少なく、そのほとんどは社員が数名~数十名の小規模工場が占める。業種は金属製品、皮革製品、繊維工業、印刷、生活用機械器具、プラスチック製品など幅広い。

平成19年から「足立ブランド」の認定事業が開始され、現在50社以上が認定されている

足立区では区内の優れた工場を「足立ブランド」として認定して積極的にPRしている。他では絶対に真似のできない、いわゆる「職人技」と言われるような技術が数多くあり、上手くマッチングできれば大きな変化を生み出すだろう。

冊子では会社情報や技術の特徴をカラーで詳しく紹介

アルミ・チタンなども溶接する高度な技術

あらゆる素材に対応するという。溶接個所も美しい

足立区で紹介するのはカシマウェルディングの溶接加工だ。親子で営む小さな工場ながら、鉄・ステンレス・銅の他、高度な溶接技術が必要なアルミやチタンなど、あらゆる素材の溶接に対応可能だという。薄物から厚物(0.5mm~50mm)の溶接にも対応している。

その高い技術から、他社では断られてしまったような難しい溶接の依頼が舞い込むことも多く、仕上がりの質についても評判が高い。

薄物の溶接例

1枚の金属板からできる美しい医療器具

パイプや線材の曲げではなく、板材のまるめ、ろう付けで作られている医療器具

足立区でもう1つ紹介するのが三祐医科工業の「金属医療器具」だ。一見、パイプや線状の素材を曲げて作っているように見えるが、板状の金属をまるめ、ろう付け(接合)した後に磨きあげて製作している。

医療用なので、表面の滑らかさや、微妙な曲がり具合に高い精度が要求される。その技術でつくられた「医療器具屋さんが作った耳かき」が賞をとり、話題になったこともある注目の企業だ。

三祐医科工業の金属医療器具の製作工程

23区有数の工業集積地。製品出荷額はトップクラス、板橋区

23区北西部に位置する人口約56万5000人の区。住宅街や商店街だけでなく工場も多い

最後に紹介するのは板橋区だ。住宅街・商店街・公園などが多いのどかな区だが、荒川に沿った北部には23区としては内陸部随一の工業専用地域を有する。製造品出荷額では、全国でも「工場の街」として知られる大田区に次ぐ23区内2位の実績を誇る。戦前から光学部品や精密部品を扱う工場が発展し、戦後は重化学系の工場が移転する一方で、情報産業の発達により印刷関係の工場が多くできた。

地図付きの製造業PR冊子

板橋区内で独自に産業見本市を開催するなど、製造業に対する支援が厚い。新たな企業の立地やベンチャーへの支援などにも積極的で、ものづくりの街としての発展に力を入れている。製造業に優しい街と言えるだろう。

板橋区内の製造業の特徴や各種支援事業を紹介

世界最小クラスのドリル

φ0.03mmの微小径ドリル

板橋区で紹介するのがサイトウ製作所の微小径ドリルだ。サイトウ製作所はドリルやエンドミルなどの切削工具を製造し、中でも「小径」「精密」という分野に注力している。φ0.03mmの微小径ドリルは世界トップクラスの細さだ。サイトウ製作所の小径ドリルは、小型化・薄型化・微細化する近年のさまざまな製品の製造には無くてはならない存在と言える。

細いだけでなく、切削精度も高い

2μm以内の高精度の再現性

位置決めの段取りを大幅に短縮

板橋区でもう1つ紹介するのが、本間製作所のマルチチャック。繰返し位置決め精度2μm以内という高精度の再現性により、位置決めの段取り作業を大幅に短縮する。わずかに傾斜のついたホルダーをベースに差し込み、ボルトで締めることで高精度の再現性を実現している。

シンプルな構造なので取り付けの手間もかからず、ワークが付いたホルダーをそのまま次の工程に持っていって差し込めば位置決めの段取りが終わる。これがあれば、加工現場での時間や人にかかるコストを大幅に削減することが可能だ。

目で見ても分からないわずかなテーパがついたホルダー

目立たぬがすごい技術が隠れている町工場

今回訪れた各区のブースには、他にも気になる技術や製品がいくつもあった。また別の形でそのようなものを紹介できたらと思う。

住宅街を歩いていると、工場と思われる小さな建物に出会うことがある。一見何を作っているか分からないその工場内では、実は世界を変えるような技術や製品が作られているかもしれない。目立たぬところにすごい技術が隠れている――町工場の面白いところだ。

展示会などに出展する自治体や公共団体のブースを訪れると、そういった工場を知ることができる機会が多い。積極的に立ち寄っていきたい。

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