産総研、約99%と高選択的にナイロンの原料を合成――太陽光を利用した半導体光電極で、高難度のC-H結合切断と選択反応を実現

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産業技術総合研究所(産総研)は2018年8月2日、酸化物の半導体光電極を用い、ナイロンなどの原料であるKAオイル(シクロヘキサノン+シクロヘキサノール)を常温/常圧下で合成する技術を開発したと発表した。太陽光エネルギーを利用したシクロヘキサンの直接酸化により、約99%と高選択的にKAオイルを合成できる。

近年、光触媒電極を用いて太陽光から水や炭酸ガスを原料として水素や簡単な有機物を合成する研究が活発に行われている。高い効率と非常に低い電圧(外部電力)で太陽光エネルギーを直接利用した光電気化学的な化学品製造プロセスが実現できれば、省エネ効果やCO2排出削減、低コスト化が期待できるため、有用な化学物質変換技術としての発展も期待されている。

一方で、シクロヘキサンの酸化によるKAオイルの合成は、ナイロン製造の重要な工程であり、世界での年間生産量は600万トン以上となっている。現在、KAオイルは高温/高圧下で多大なエネルギーを使用して製造されているが、選択性を上げる制御の難しい酸化反応であり、革新的な新規プロセスの開発が強く求められていた。

同研究チームは数ある有機系の反応の中から、光電極の強い酸化能力を生かし、高難度でインパクトの大きなシクロヘキサンの酸化反応に取り組んだ。飽和炭化水素であるシクロヘキサンのC-H結合は非常に強固であり、結合の切断や活性化には高温でエネルギーを投入したり、反応性の高い特殊な酸化剤を用いたりする必要がある。

今回、酸化タングステン薄膜の半導体光電極を用いて、わずかな外部電圧をかけて疑似太陽光を照射すると、KAオイルが選択的に合成できることを見いだした。擬似太陽光照射だけでもこの反応をわずかに進行させられるが、外部電圧をかけると生成速度は劇的に向上し、最大で6倍程度にまで達したという。また作製した酸化タングステン半導体光電極は安定であり、複数回利用しても問題なく動作することも明らかにした。

反応で得られた酸化生成物を分析したところ、副反応としてのCO2生成は非常にわずかで、KAオイルの生成物選択性は99%以上と非常に選択性が高いことが分かった。酸化タングステン表面の優れた触媒作用が要因と考えられるという。

今回開発した技術は、高付加価値の有用化学品を太陽光エネルギーとわずかな電気エネルギーから合成できる技術であり、持続可能な社会への貢献が期待できるとしている。

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