MITとスタンフォード大、効率的なガス分離を可能にする新素材を開発

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混合原料ガスから個々のガスを非常に高い効率で分離する、選択的透過性の高いメンブレン材料を開発。/Courtesy of the researchers

MITとスタンフォード大学の共同研究チームが、混合ガスから個々のガスを非常に高い効率で分離する、選択的透過性の高いメンブレン材料を開発した。新しい種類のポリマーとして提案されている「ラダーポリマー」を活用したものであり、従来のセルロース系メンブレンよりも3~5倍高い選択性と100倍高い透過性を示し、化学分離工業プロセスにおけるエネルギー消費および温室効果ガス排出量を大幅に削減できると期待される。研究成果が、2022年3月24日の『Science』誌に公開されている。

工業的ガス分離技術は、化学産業分野における重要なプロセスだ。天然ガスやバイオガスにおける不純物除去、医学用途や産業分野における空気からのO2やN2の分離、カーボン固定のためのCO2分離、カーボンフリーの輸送燃料用H2の製造など、すべてガス分離によって行われている。だが、これらのプロセスの多くには蒸留や吸収工程があり、全体として世界のエネルギー消費の約15%とも言われ、相当量の温室効果ガス排出の原因になっている。

一方で、メンブレンを用いる化学分離プロセスは、他のプロセスよりも効率的でエネルギー消費削減に極めて有効であるが、透過性と選択性の間のトレードオフが常に存在し、その効率には限界がある。

スタンフォード大学化学科のYan Xia准教授の研究室は、単結合の一重鎖で結ばれる古典的なポリマーと異なり、「横木」によって強化された二重鎖で結合されるラダーポリマーの開発を進め、「CANAL」と呼ぶ効率的な環生成アンヌレーション反応(アレーンとノルボルネンの共重合反応)により、剛直で安定したリボン状のラダーポリマーを創成することに成功している。

ラダーポリマーは溶液中で合成され、工業的な成型プロセスにより薄いシートに成形できる。また、炭化水素原料の選択によりさまざまな構造や特性を付与できる多様性を備えている。研究チームは、その過程で1nm以下の微細孔を持つ組み合わせを見出し、さらに微細孔サイズが炭化水素原料の選択によって調整できることを確認した。

MIT化学工学科のZachary Smith助教授と連携して、メンブレンとしての化学分離特性について詳細な検討を行った結果、メタンからH2またはCO2を分離する場合、既存のセルロース系メンブレンよりも3~5倍高い選択性と100倍高い透過性を示すことが判った。更に、ラダーポリマー構造の工夫などにより、同程度の分子サイズを持つため本来分離しにくいガス、例えばO2とN2の選択性を高めることも確認した。

研究チームが立ち上げたスピンオフ企業Osmosesは、2021年にMITの10万ドル起業家コンテストに優勝するとともに、MITのファンドの支援も受けており、数年以内に産業用にスケールアップして実用化することを目指している。「水素分離や炭素固定など、脱カーボンや水素ベースの経済社会への移行に重要な役割を果たす」と期待している。

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