- 2021-8-23
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- カリフォルニア大学サンディエゴ校, カーボンナノチューブ, ハイドロゲル, バイオ燃料電池, 乳酸, 学術, 汗, 発汗式発電デバイス, 電力
カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、指先の汗から電力を生成するデバイスを開発した。このデバイスは大量の汗をかかなくても発電が可能なので、睡眠中でも電力を得られる。研究の詳細は、2021年7月13日付で『Joule』誌に公開されている。
従来の発汗式発電デバイスは十分な汗を得るために、ランニングや自転車こぎなど激しい運動が必要だった。運動によって大量にエネルギーを消費するため、発電効率を計算すると1%に満たないことが多い。
今回研究チームは、特別な行動を取らなくても発電ができる受動的なデバイスを開発した。指先から汗を集めることは意外に感じるかもしれないが、指には汗腺が集中しており、発汗量は体の他の部位と比べて100〜1000倍も多い。
開発したデバイスは、汗に含まれている乳酸をエネルギー源とするバイオ燃料電池だ。約1cm2と指先サイズで薄く柔軟で、絆創膏のように巻きつけて使用する。デバイスはカーボンナノチューブ製で、汗の吸収を高めるためにハイドロゲルも含んでいる。陽極には乳酸を酸化する酵素、陰極には白金が搭載されており、乳酸があればいつでも発電を開始する。
またバイオ燃料電池とは別に、機械的エネルギーを電気に変換する圧電発電機構も備えており、スマートフォンのタップやキーボード入力、マウスのクリックなど指を軽く押す動作でも発電できる。
1本の指にデバイスを装着した状態で10時間眠ると、約400mJのエネルギーが生成でき、これは小型ウェアラブルデバイスの駆動に十分なエネルギー量だ。発電量は少ないが、普段と変わらない生活をしながら発電ができるため、非常に効率良くエネルギーを回収できる。
研究チームは、今後より改良を重ね、将来的には血糖値測定器のようなヘルスケア用品のウェアラブルデバイスに応用したいと考えている。