理化学研究所は2016年11月8日、有機両極性半導体を用いたデジタル回路デバイスの基板にアルキル処理を施すことで、流れる電子または正孔のキャリアの種類を制御し、消費電力を大幅に低減する手法を開発したと発表した。
有機半導体は材料の溶液を塗布することで半導体層を形成でき、インクジェットや輪転機を使って印刷することで大面積化も可能で、作成コストも無機半導体に比べて安価という特徴を持つ。しかしデジタル回路作成のためには、正孔伝導型、電子伝導型の2種類を用意し、それを塗り分けなければならないため、印刷による回路作製が困難だった。一方両極性半導体は1つの材料でデジタル回路を作製できるが、電子と正孔が無差別に流れるため消費電力が大きくなり、実用には難しいとされてきた。
今回、同研究所では両極性半導体のキャリアの種類を制御する方法として、2015年に報告された単分子膜によって形成される有機半導体中の電荷層に着目した。
その結果、マイナスに帯電したフッ化アルキルの単分子膜によって有機両極性半導体中にプラスの電荷層を発生させ、電子キャリアを捕集し正孔のみを伝導させることに成功した。またプラスに帯電したアミノアルキルの単分子膜を用いて電子のみを伝導させることも可能となった。このキャリア制御法により、有機両極性半導体を用いても消費電力の低いデジタル回路が実現できたという。
今後は有機両極性半導体を用いたな軽量で柔軟、低コストで省エネルギーな電子デバイスの実現が期待できるという。