- 2024-12-26
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京都大学は2024年12月24日、同大学化学研究所が英オックスフォード大学、分子科学研究所、理化学研究所と共同で、スズを含むSn-Pb系ペロブスカイト半導体の界面構造制御法を開発したと発表した。また、ボトムセルとして用いて、オールペロブスカイトのタンデム型太陽電池を高性能化した。
異なる光電変換領域をもつ複数のセルを組み合わせた多接合太陽電池(タンデム型太陽電池)が脚光を浴びている。特に、接合する全てのセルがペロブスカイト太陽電池である「オールペロブスカイト型のタンデムセル」の高性能化には、長波長領域の光を光電変換できる狭バンドギャップをもつ、Sn-Pb系ペロブスカイト太陽電池(Eg: ~1.25eV)の特性を改善することが重要となっている。
ABX3型のペロブスカイト半導体は、用いるイオンの組成を変えることで、さまざまなバンドギャップ(光電変換領域)をもたせることができる。
研究では、添加剤として用いるアミノ酸塩の役割を溶液化学の観点から理解するために、官能基の効果を切り離して捉えることにした。分子中にアンモニウム基とカルボキシル基、またはその両方を含む、構造的に類似した3つの分子、塩化フェネチルアンモニウム(PEA)、3-フェニルプロピオン酸(PPA)、L-フェニルアラニン塩酸塩(PhA)を用いて検討した。
各種分光測定の結果と理論計算により、塗布成膜過程でのフェニルアラニンがどのようにペロブスカイトの構成イオンと相互作用し、埋もれたペロブスカイトの下層の界面を選択的に構造制御するのかについて、化学的な視点からメカニズムを明らかにした。
ペロブスカイト半導体の構成イオンのうち、特にSn(II)種が前駆体や添加剤との相互作用を支配していることを発見し、カルボン酸基が溶液のコロイド特性と膜の結晶化を制御する役割を担うことを見出した。一方で、アンモニウム基は、膜の光電変換特性を改善する役割を担うことを明らかにした。
特に、これら2つの官能基を分子内に組み合わせた材料(アミノ酸塩、フェニルアラニン)は、半導体としてのペロブスカイト薄膜の品質と均質性を大幅に改善し、個々の官能基を別々の分子の一部として導入した場合(PEAIやPPA)の効果を凌駕することがわかった。
この手法で得られた高品質なSn-Pb系ペロブスカイト層を用いて、単接合セル、2接合型タンデムセル、3接合型タンデムセルの各デバイスを作製した。それぞれの開放電圧は0.91V、2.22V、3.46V、光電変換効率は23.9%、29.7%(認証値29.26%)、28.7%を達成している。
また、1cm2のサイズの3接合デバイスでも、28.4%(産業技術総合研究所(AIST)にて27.28%の認証値)の光電変換特性を得られた。さらに研究では、初めて4接合型のペロブスカイトタンデム型デバイスの作製に成功。4.94Vの高い開放電圧と27.9%の光電変換特性が得られることを実証している。
さらに光学シミュレーションの結果からは、現在の材料を用いてそれぞれのセルの膜厚等をさらに最適化することで、3接合セルでも光電変換効率は34.4%まで向上させられることが示唆されている。耐久性に関しても、封止した3接合セルは、大気下で860時間の光照射後も、初期効率の80%を維持することが確認されている。
研究の成果は、オールペロブスカイトの多接合型太陽電池のベンチマークとなるもので、ペロブスカイト太陽電池において3接合および4接合のタンデムセルへの道筋を明確に示したものとなる。また、実用性を見据えた1cm2サイズの3接合セルでも、2接合セルに匹敵する光電変換効率が得られることを実証した。
今回の成果は、京都大学発のベンチャーのエネコートテクノロジーズにも技術移転し、高性能のペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて開発研究していく。
関連情報
スズを含むペロブスカイト半導体の界面構造制御法の開発とメカニズム解明〜高性能多接合(タンデム)型太陽電池の実現〜 | 京都大学