- 2024-11-18
- 技術ニュース, 機械系
- ANC, NTT, オープンイヤー型ヘッドホン, ノイズキャンセリング, 日本電信電話, 機械的遅延, 能動騒音制御, 音響的遅延
日本電信電話(NTT)は2024年11月14日、耳をふさがないオープンイヤー型ヘッドホンでも、周囲の騒音を耳元で低減できるノイズキャンセリング技術を開発したと発表した。この技術を使ったオープンイヤー型ヘッドホンを、11月25日から29日まで武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)で開催される「NTT R&D FORUM 2024―IOWN INTEGRAL」で展示する。
今回NTTは、能動騒音制御(Active Noise Control: ANC)という技術を使って、ノイズキャンセリングを可能にした。ANCでは、ヘッドホンに内蔵された参照マイクで騒音を集音し、耳元で騒音が消えているかを判断する誤差マイクを用いて、騒音の逆位相信号を生成し、ヘッドホンから再生することで騒音を相殺する。主に1000Hz以下の低周波を中心に減少させる。
しかし、オープンイヤー型ヘッドホンは耳をふさがないため、人間の耳が最も敏感に感じる3000Hz付近の音は低減されず、騒音が耳にそのまま到達する。このため、オープンイヤー型ヘッドホンで騒音を低減するには、ANCで1000Hz以上の高周波の消音が必要だった。
ANC技術を用いて1000Hz以上の騒音を低減するには、参照マイクで集音した騒音から、騒音の逆位相信号が誤差マイク位置に到達するまでの処理を極低遅延(サブミリ秒単位)で実行する必要がある。
そこで、音が発生源から目標位置に到達するまでの時間差(音響的遅延)と、機器やヘッドホン内部の機械的な部品が動作する際に生じる遅れ(機械的遅延)の2つを減らす技術を開発した。参照マイクや誤差マイク、スピーカーユニットなどの配置を設計し直して音響的遅延を減らすとともに、新たなハードウェア設計とソフトウェア処理で機械的遅延を削減し、さらに、音漏れを防ぐオープンイヤー型ヘッドホンの設計技術と組み合わせることで、消音信号を周囲に漏らさず、利用者の周囲で騒音が増えることを防いだ。
同社は試作したヘッドホンを用いて、飛行機内の騒音で性能を確認したところ、1000~3000Hzで最大13.7dB、平均7.8dBの騒音抑圧が可能だった。
今後、この技術を搭載したオープンイヤー型ヘッドホンの実用化を目指し、さらなる騒音低減の広帯域化を進め、さまざまな環境下での検証を進めていく。また、没入型エンターテインメントや音声ガイドなどにも活用し、NTTグループ各社を通じた展開を図る。