SPring-8で高エネルギーX線を効率良く集光する多層膜集光ミラーを開発 高輝度光科学研究センターと理化学研究所

高輝度光科学研究センターと理化学研究所は2024年2月22日、大型放射光施設「SPring-8」のBL05XUにおいて、100keVという高いエネルギーのX線をサブマイクロメートルに集光する多層膜集光ミラーを共同開発したと発表した。

SPring-8は、理化学研究所が包括的運用を、高輝度光科学研究センターが運転/維持管理を担う大型放射光施設だ。SPring-8の特徴の1つが、明るい高エネルギーX線が利用できることだ。高エネルギーX線を小さなビームに集光できれば、厚い金属試料などの内部構造を観察することが可能になる。しかし、従来高エネルギーX線を高いスループットで小さなビームに集光できる光学素子は開発されていなかった。

同研究では、高エネルギーX線用の多層膜集光ミラーを開発。100keVの高エネルギーのX線を高い効率で集光できるようにした。

多層膜は光の干渉効果によって、全反射臨界角よりも大きな斜入射角で、特定バンド幅のX線を反射させることができる。今回、楕円面形状のミラー基板上にタングステンと炭素の膜を交互に50組を積層した、膜厚傾斜付き多層膜を成膜。集光ミラーの光軸方向の位置でX線が入射する斜入射角度によって、多層膜の周期を変化させることで、高い反射率を実現した。反射率は2枚の集光ミラーで74%だ。

多層膜集光ミラーを反射できる光のバンド幅を約5%に設計することで、高いスループットを得ることができた。また、このバンド幅内では色収差はほぼ発生しない。

実際にSPring-8のBL05XUラインに多層膜集光ミラーを設置し、集光ビームを評価したところ、集光ビームのサイズが約0.25μmで、100keVのサブマイクロビームの形成にも成功した。

測定した集光ビームサイズとテストチャートの観察結果

今回開発した技術用いて、金属ケースで覆われたデバイスの内部構造や厚い鉄鋼材料内部の局所構造を観察するための研究がすでに始められている。

関連情報

高エネルギーX線の非常に明るいサブマイクロビームを形成 ~厚い金属試料内部のマイクロ領域が観察可能に~(プレスリリース) — SPring-8 Web Site

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