電子廃棄物をリサイクルして、高性能ハイブリッド被膜を作る

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電子廃棄物をリサイクルして、鋼表面を強固にコーティングするハイブリッド被膜を考案した。ナノサイズの圧子を押し込んでも、割れたりチッピングすることなく、堅固に鋼に結合していることが顕微鏡観察により明らかになった。

シドニーのニュ-サウスウェールズ大学の研究チームが、使用済みのプリント回路基板やPCディスプレイ等の電子廃棄物をリサイクルして、鋼表面を強固にコーティングする技術を考案した。世界規模で増大するe-wasteと呼ばれる電子廃棄物から、高温化学反応によって有効活用できる元素や物質を抽出するとともに鋼表面に被覆するというもので、研究成果が米国化学会の『ACS Omega』誌において2020年7月13日にオンライン公開されている。

通常のリサイクルは、アルミ缶やガラス瓶のような、単一材料から成る大量の使用済み製品を、精製して元の原料に変換する。ところが、e-wasteのような複合的廃棄物には、簡単に分離できない多数の物質や元素が混合して含まれているため、同様には扱えない。一方、e-waste廃棄量は年々増大しており、国連統計では2016年に世界で4470万トンが廃棄され、2021年には5220万トンに増加すると予測されている。また、e-wasteには高価な貴金属類が多く含まれており、持続可能材料研究技術センターのVeena Sahajwalla所長は、「銅鉱石には3%の銅しか含まれてないが、プリント回路基板PCBのようなe-wasteには10~20%の銅が含まれている」と語る。リサイクルによって得られるメリットは決して小さくない。

研究チームはこれまで、高温化学反応を通じてe-wasteの化学結合を選択的に分解することにより、多様な有益な材料を抽出することに成功し、例えば、廃棄されたPCディスプレイに含まれるガラスとプラスチックの混合物から、Si系セラミックスを抽出できることを明らかにしている。研究チームは、このようなSi系セラミックスと、使用済みのPCBに含まれる銅を組み合わせて、耐久性のあるハイブリッド被膜を創製し、金属表面を腐食や摩耗から保護することにチャレンジした。

まず、ディスプレイに含まれるガラスとプラスチックの粉末を1500℃に加熱し、直径10nmから50nmのSiCワイヤを生成した。このナノワイヤと、粉砕したPCBから回収した銅との混合物を、鋼表面に配置して1000℃まで加熱すると、銅が融解して1μ厚さの薄膜が形成された。この薄膜層は、銅マトリックス中にSiCナノワイヤが分散する複合材料となっており、セラミックのような高い硬度と金属のような優れた靱性を併せ持つ、新しいハイブリッド被膜として機能する。この被膜により鋼の表面硬さが約125%増大するとともに、ナノサイズの圧子を押し込んでも、割れたりチッピングすることなく、堅固に鋼に結合していることが顕微鏡観察により明らかになった。

「長い間、人類は必要な原料を供給するのに鉱山を開発して採掘し、最後には多くの廃棄物を埋め立て地に捨ててきた。将来的には、資源獲得のために、これらの埋め立て地を採掘する時代が来るであろう」と、Sahajwalla氏は展望する。

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Microrecycling science delivers new ‘material microsurgery’ technique

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