産業技術総合研究所(産総研)は2017年1月26日、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)などのナノ炭素材料の分散液に光を照射することで、ナノ炭素のみの層を簡便に薄膜化(膜厚20~30nm)できる技術を開発したと発表した。
一般にナノ炭素材料の薄膜化には、水や有機溶媒中に材料を分散させて加工する「ウェットプロセス」が用いられる。だが、ウェットプロセスで使われる既存の分散剤は、ナノ炭素材料への吸着性が高く、薄膜中に残留しやすい。残留した分散剤は導電性などを低下させる要因になるが、これを取り除くには強酸洗浄や熱処理などの複数の煩雑な工程が必要だった。
そこで産総研は、光照射によりナノ炭素材料から脱着する分散剤を開発した。この分散剤とナノ炭素材料を有機溶媒中で混合すれば、均一な分散液が得られる。そして分散液を基材上に塗布し、20秒程度紫外光を照射すると、照射部分でだけ分散剤が脱着し、ナノ炭素材料の薄膜が形成される。
照射していない部分のナノ炭素材料や、脱着した分散剤は洗浄により簡単に取り除ける。また、今回開発された薄膜形成技術を使えば、さまざまな素材(ガラス、樹脂、ゴムなど)や形状の基材上に単層CNTを薄膜化できる。従来のウェットプロセスでは、曲面や凹凸面での薄膜化は困難だった。
産総研による今回の研究成果は、薄膜化とパターニングの工程を大幅に短縮する。そのため、ナノ炭素材料の特徴を生かした柔軟で軽量な次世代電子デバイス、例えば二次電池やキャパシターなどの開発を促進することが期待できる。