大阪大学は2017年6月21日、1400℃以上の超高温度まで高強度を維持する新材料を開発したと発表した。火力発電所やジェットエンジンなどのタービンブレード用材料に用いることで熱効率を上昇させ、二酸化炭素(CO2)排出量の大幅な削減が期待できるという。
大阪大学では2000年初頭に、遷移金属とシリコンを組み合わせた遷移金属シリサイドであるNbSi2(ニオブダイシリサイド)とMoSi2(モリブデンダイシリサイド)を組み合わせた「複相シリサイド合金」を開発し、研究開発を進めてきた。複相シリサイド合金は、次世代超高温構造材料の候補材として注目されてきたが、複相シリサイド合金が有する「ラメラ組織」には、特定の方向からの荷重負荷により高温強度や室温靱性が大きく低下するという課題があった。
今回の開発では、複相シリサイド合金にCr(クロム)とIr(イリジウム)の元素を0.5at.%(アトミックパーセント)同時添加することにより、ラメラ組織に加えて特徴的な「格子ラメラ組織」を発達させることに成功した。従来の複相シリサイド合金で見られた、優れた力学特性を保持しつつ、強度/靱性を同時に向上させた。
発電用タービンエンジンなど燃焼システムの熱効率向上は、温室効果ガスの排出削減に対して有効な方策とされている。現在、国内で排出するCO2の約30%が火力発電所に由来しており、今回の新材料開発は、低炭素社会の実現に大きく寄与するとしている。