- 2017-9-11
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- Acta Astronautica, EmDrive, Roger Shawyer, Satellite Propulsion Research(SPR)
英Satellite Propulsion Research(SPR)は、既存のロケットのように大量の燃料と酸素を含んだ推進剤を使うことなく、円錐形の導波管の中で電磁波を反射させることで推進力を生むロケット技術「EmDrive」を研究している。これは同社を設立したRoger Shawyer氏が1999年に提唱した技術で、2010年以降NASAの研究チームや中国の西北大学が小規模実験による検証に成功したという発表もある一方、EmDriveのコンセプトは物理法則に反している、との指摘もある。研究の一部は、Acta Astronautica誌に2015年7月10日にオンライン公開されている。
今日のロケットは、推進剤を燃焼させることで発生するガスを後方に噴射させる反作用として前方への推進力を得ている。ところがEmDriveエンジンでは、テーパー形状の密閉された導波管の中にマグネトロンからマイクロ波を継続的に放射させることにより推進力を獲得できるとうたっている。Shawyer氏によれば、マイクロ波が反射板に衝突すると放射圧が発生して反射板に力を及ぼすが、反射板の内径に差があることで放射圧に差が生じ、かつ共鳴効果によって増幅された力が一方向の推力となると説明されている。
同氏はEmDriveについて、「宇宙でも大気圏でも利用可能で、同じ推進装置で軌道に乗せることも軌道から離脱することもできる」と、その技術の可能性を語っている。また、「ごく穏やかな推力しか発生しないEmDriveエンジンを使えば、大気圏再突入時でも高温に曝されることなく重力と釣り合いをとりながら降下できるため、ロケットの再利用も可能だ」としている。
電磁波の放射圧から推進力が得られることは科学的に確認されている。例えば2010年に打ち上げられたJAXAの「IKAROS(イカロス)」プロジェクトでは、「ソーラーセイル」が太陽光による放射圧を推進力にした光子加速の実証実験に成功した。だが、EmDriveエンジンでは推進機から外部に噴射されるものがないので、ニュートン力学の第三法則(作用反作用の法則)に反しているとして、疑問視する声も大きい。
例えわずかな推進力だとしても、推進剤を使うことなく電気エネルギーによって加速し続けるロケットエンジンが実現できれば、宇宙開発における大きなブレークスルーになるだろう。ただし、この夢のロケットの完成には、さらなる理論および開発研究の結果を待つ必要があるようだ。