- 2018-4-24
- 自動車, 転職・キャリアアップ, 電気・電子系
- EV(電気自動車), Tier1(ティアワン), 全固体電池, 車載電池
~ 自動車業界の技術トレンドを各分野から見る ~
本記事は、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・甲斐 由美氏への取材記事です。自動車業界の技術やキャリアのトレンドについて、機械系・電気系・ソフトウェア系・化学系といった専門分野別に考え、エンジニア市場の変化、求められるマインド・専門性など、エンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。(執筆:中嶋嘉祐)
――前回、自動車業界の化学系エンジニアに対するニーズについて、全体的なお話を伺いました。
今回は、個別の技術について教えてください。例えば最近のキーワードとして、「EV(電気自動車)シフト」があります。EVや次世代エネルギーの研究開発を加速させようと、化学系エンジニアを求める企業が増えていたりするのでしょうか。
[メイテックネクスト 甲斐 由美氏]最近のEVシフトに関連する動きとしては、最上流の次世代型電池の工法開発など、研究に近い仕事で求人が出るようになっています。他にも、EV関連の生産技術や、製品化を担うような分野でも募集が続いていますね。電池は化学的な反応の問題も大きいため、化学系エンジニアが幅広く求められています。
電池に関する最先端の研究として、ホットなテーマになりつつあるのは「全固体電池」でしょうか。自動車業界や化学系メーカーなどは、電解液を使わない全固体電池に注目しているように感じます。
全固体電池に関する専門性・技術を持っている化学系エンジニアは少ないです。もし転職を希望する方がいらっしゃるなら、引く手あまたになるはず。完成車メーカーで採用される可能性も十分にあるでしょう。
全固体電池の最新動向としては、一部のシリコン系電池剤メーカーが完成車メーカーに向けて提案・供給するようになってきています。用途にもよりますが、これからしばらく、全固体電池に詳しい化学系エンジニアは仕事を探すのに困らないと思います。
EVに必須の車載電池、生産技術のノウハウを持つエンジニアにもニーズあり
[甲斐氏]また、EVの量産を本格化させる上で、車載電池の生産技術を改善していく必要もあります。例えばセル方式の電池生産では、無機の紛体を扱うことになりますし、封止するラミネートの技術も重要です。電極に関しては、微細な顔料を分散するための塗料の開発など、塗工のプロセスの重要度も増してきています。
こういった生産技術のノウハウを持っているエンジニアは、自動車業界にも活躍の場があります。EVシフトを勝ち抜くために、車載電池は重要な部品の1つになるでしょう。生産技術系のエンジニアにとって、非常に挑戦しがいのある仕事になるでしょう。
――電池以外の要素技術については、いかがでしょうか?
[甲斐氏]前回、「これから人気が出てきそうな専門性」として取り上げた有機系や高分子系の専門を持つ材料系エンジニアも、さらに必要とされることになるかもしれません。
電動化が進むにつれて、電子部品まわりで電気化学的な反応が生じて、何らかの不具合が出てくる恐れもあります。材料メーカーと共同開発を進めていくために、材料に関する知見を持った化学系エンジニアを完成車メーカーが必要とする可能性は十分に考えられます。
いずれにせよ、自動車は部品点数が圧倒的に多いです。どの分野の化学系エンジニアでも、活躍できる余地は十分にありそうです。
2020年になってもEVはまだ1%前後か。当面、先端研究を担うのはTier1に?
[甲斐氏]恐らく、今後の自動車業界ではEVシフトが進むと思います。けれど2017年7月発行の『情報センサー vol.123』によると、EVの占める割合は2020年になっても1%前後にとどまるという予測も示されています。
そうした状況を考えると、完成車メーカーではまだまだエンジンに詳しいエンジニアが主流を占めるのではないでしょうか。本気で「車載電池について研究したい」と希望するのなら、まずは完成車メーカーを目指すのではなく、Tier1(ティアワン)と呼ばれる自動車部品メーカーで経験を積むのもいいかもしれません。
というのも、自動車業界ではTier1のメーカーの方が、まだ実用化されていない技術の研究に力を入れているからです。最先端の技術を研究したいのなら、Tier1への転職を希望した方が企業から重宝され、活躍できる可能性も上がると思います。
甲斐 由美(メイテックネクスト 化学・素材・バイオ分野 コンサルタント)
<メッセージ>
私はこれまで、企業での人事を中心に、マーケティングや会社の立ち上げなど、さまざまな仕事を経験し、多くのエンジニアの方と接してきました。
今の職場や仕事に疑問を抱く時、また新たな挑戦として転職をひとつの選択肢として考える機会は、一度ならずご経験されていると思います。
同じく転職を経験している者として、また人事として数百人の採用、育成に携わってきたアドバイザーとして、ぜひ貴方の未来をお手伝いさせてください。 ご連絡、おまちしております。