東京理科大学や慶應義塾大学などは2018年4月24日、擬2次元空間に閉じ込められた水に、高密度液体と低密度液体の2つの状態が存在することを発見したと発表した。
高密度液体と低密度液体は、どちらも過冷却水と呼ばれる特殊な水の種類。高密度液体は通常の水よりも液体のように振る舞い、低密度液体はドロドロで氷に近い性質を持つ。常温常圧の水や超臨界水などと異なる性質を持つことから、両者を安定的に存在させることができれば、溶媒や化学反応の場として活用することで、過冷却水を利用した新技術が展開される可能性があるという。
ただし過冷却水である両者は、作成するには氷の結晶ができないように氷点下に冷却する必要があり、そのプロセスを実現するのは極めて困難。ごく短時間しか存在できないという欠点もある。研究者の中には、カーボンナノチューブや多孔質シリカのようなナノ細孔に水を閉じ込めることで氷の結晶が生成しにくい条件をつくり出し、低密度液体や高密度液体を安定的に存在させようと試みる動きもある。しかしそれも、ナノ細孔を任意の形状で作成することは、まだ実験的に困難な状況だ。
そこで今回、研究グループは分子動力学シミュレーションを用いて、広範囲の温度圧力条件で、水分子がどのような状態になっているか研究した。
水分子2層分の幅がある平行平板間に剛体水分子モデルを配置し、ナノ細孔をモデル化した擬2次元空間を作成。シミュレーションしてみたところ、次の図のような相図が明らかになり、2層アモルファス固体、2層低密度アモルファス固体、低密度液体、高密度液体が存在することを確認した。
なお、2層アモルファス固体に類似した結晶の存在はすでに実験でも確かめられており、シミュレーション結果の正しさの裏付けになると説明している。
研究グループはさらに、高密度液体と低密度液体は定性的な違いがあるだけでなく、定量的にも違いがある液体であると示した。具体的には、「高密度液体相は低密度液体相の1.2倍程度の密度を持つ」「低密度液体を冷却すると2層低密度アモルファス固体になるが、高密度液体ではそうならない」「低密度液体は高密度液体に比べて、酸素原子位置の空間相関が長距離に及び、より氷に近い特徴を持つ」といった違いがあるという。