竹中工務店は2018年5月30日、鉄骨造建物の床に生じる微細な振動を低減することで居住性を改善する床制振技術「SPADA-floor」を鉄骨階段に応用した「SPADA-stairs」を、同社の大阪本社改修時に初適用したと発表した。
SPADA-stairsは、力を加えると変形して電圧を発生し(圧電効果)、逆に電圧をかけると伸び縮みして力を発生する(逆圧電効果)性質を有する機能性材料である圧電セラミックスを利用している。階段のささら桁(踏板を両側から支える鋼板)の端部に取付けた、膜型の圧電セラミックスから成るアクチュエーターが、センサーで検知した階段の振動を打ち消すようにささら桁の動きを制御することで、微細な階段の振動を低減する。
この制振技術は、同社が2017年に開発した、床に生じる微細な振動を低減するSPADA-Floorの技術を階段に適用したものだ。取り付けるアクチュエーターは小型、軽量で、大きな設置場所を必要とせず、施工性に優れている。これまで鉄骨階段は、大きな振動が発生しないよう、必要以上の太い部材を用いて設計されることがあったが、今回の技術を用いることで、極力小さな部材断面を用いた軽快感のあるデザインが実現できる。
階段の振動を対策前と比較したところ、約3分の1に低減できることが実証された。また、同等の振動性能を有する階段と比較して、ささら桁の成(板の幅)320mmを220mmに低減できた。施工時には、重機等の建設機械を一切用いず手作業で取り付けたという。
同社では今後、「SPADA」シリーズを、床や階段のほか、振動制御が必要とされるホテルの天井や精密機械工場、デザイン性が求められる商業施設等への適用拡大を図る。