- 2019-2-21
- REPORT, 機械系
- IoT, VRグラス, ものづくりセミナーサーチ, ウェアラブルセンシング, 人体センシング
本記事では、20の技術および生産系主催企業・団体と提携して1000件以上の技術および生産系セミナーを案内している「ものづくりセミナーサーチ」から、嶋村良太技術士が“旬”のテーマをピックアップしてお届けします。
今月のキーテクノロジー「人体センシング」
IoTという言葉で代表されるように、情報技術がさまざまなモノ(製品)・コト(サービス)と組み合わされて社会に溶け込み、私たちの生活を大きく変えようとしています。私たちの身体や感覚・感情と直接つながる分野も例外ではありません。今回取り上げる「人体センシング」は、人体のさまざまな状態を計測し、情報技術で扱えるデータにして機器やシステムとの連動・融合を図る技術です。
なかでも医療・ヘルスケア分野での研究開発は広く進められており、心電・心拍、体温、酸素飽和度、血圧、血流、血糖値、呼気成分などのセンシングにより、疾病の早期発見・予防、治療の促進、看護・介護の品質や安全性の向上などのスマート化を目指しています。この分野ではスポーツ・フィットネス支援にも応用が進んでいます。既にスマートウォッチのセンシング機能をトレーニングに活用している方も多いと思います。
また、自動車の運転支援を目的とした人体センシングも注目されています。画像情報による運転者の視線や姿勢・動作のセンシングをはじめ、心拍、脳波、身体動作などの状態をセンシングして車載システムと連動させることで、居眠り・漫然運転の防止など安全性向上を実現しようとしています。
さらには人体の物理的・生化学的状態をセンシングするだけではなく、それらを感覚や感情と結び付けて評価する研究開発も進められています。心理学や精神医学の分野をはじめ、室内・車内など生活環境の最適化、製品開発やマーケティングなど幅広い応用が期待できます。
これら人体センシング技術の課題として、
1) 人体に負担をかけずに外側からセンシングする非侵襲性の確保
2) 小型軽量かつ身に付けていることを意識させないウェアラブル性の向上と、それに対応したセンサの動力源の選定
3) 得られたデータを機器・システムに伝え、活用するための安定した通信手段の確立
などが挙げられます。
セミナーでも人体センシングの基礎から実用化技術、課題への対応まで、多彩な講演が行なわれています。「ひと」とつながるIoTの技術開発を行なっている方、ビジネスチャンスを模索されている方は、次のようなセミナーで情報を入手してみてはいかがでしょうか。
【『人体センシング』分野のおすすめセミナー】
『入門 ウェアラブルセンシング技術』
2019年2月28日、3月27日 東京開催
デバイスの進化を支えるセンサ技術、アプリケーション技術について解説。ウェアラブルセンシング技術の基本から、ビジネスにいかすための応用までを一貫して習得する。
https://www.monodukuri.com/seminars/detail/2910
https://www.monodukuri.com/seminars/detail/7501
※同等内容のセミナーですが、主催者が異なるため受講料が異なります。
『エッジAIを可能とするヘルスケアIoT向けCMOS集積回路技術』
2019年3月8日 東京開催
機械学習を用いた血糖値予測機能付き・自己給電型単独動作可能持続血糖モニタリングコンタクトレンズを事例として、ヘルスケアIoTとエッジAIのこれからを示す。
https://www.monodukuri.com/seminars/detail/7512
『感性・感情・印象の評価と定量化、モデル化に向けての技術の可能性』
2019年3月25日 東京開催
生体情報からの心理状態推定、感性、感情の定量化、それらの技術の産業への展開の基礎から具体的手法、可能性と課題まで解説する。
https://www.monodukuri.com/seminars/detail/6972
『マイクロ・ナノ医療機器の創出 〜各要素技術の整理と実用化の可能性検討〜』
2019年3月26日 東京開催
体外での生体物理情報の計測デバイスをはじめ、体外と体内で用いるマイクロ・ナノの予防・診断・治療機器を整理して概説し、各技術の実用化の可能性にも言及する。
https://www.monodukuri.com/seminars/detail/7369
『脳・生体および感性情報の計測・評価と製品開発への応用』
2019年3月27日 東京開催
ヒトの感性の客観的・定量的計測手法を紹介し、脳波で動かす車いす、集中力を高めるノート、着心地のよい服など商品開発への応用、今後の課題まで解説する。
https://www.monodukuri.com/seminars/detail/457
『脳波の計測とその応用・利用技術の最前線』
2019年3月29日 東京開催
脳の計測方法の基礎から、無意識情報の可視化技術、これを実現するためのウェアラブル脳波計について紹介し、産業応用の可能性を展望する。
https://www.monodukuri.com/seminars/detail/7378
『<医療・ヘルスケアに貢献するセンサデバイスの最先端> 多用なバイオセンサ・ウェアラブルセンサ技術と応用展開』
2019年4月25日 東京開催
先制医療、予防医療、ヘルスケアで期待されるバイオセンシング・バイオデバイス技術の最先端と多用なセンシングアイディアを紹介する。
https://www.monodukuri.com/seminars/detail/6091
本情報は記事執筆時点での情報です。定員に達したため参加できない場合もございますので、ご注意ください。
「人体センシング」技術の普及促進には
私がいつも行く家電量販店では、エスカレーター前の目立つ場所にVRグラスのコーナーがあり、手頃な価格のスタイリッシュなVRグラスがたくさん並べられています。
近い将来のVRグラスに各種人体センシング機能が組み込まれ、またさまざまなウェアラブルセンサも組み合わされて、人の体や心の状態とリアルタイムで連動するゲームなどのエンタテインメントが実現するのかもしれません。
これまで各種情報技術の普及局面では、エンタテインメント分野への応用が重要な役割を果たしてきました。人体センシングもそのようにして、世の中に普及していくのではないかと考えています。
関連リンク
ライタープロフィール
嶋村良太
技術士(機械部門、総合技術監理部門)
1988年東北大学工学部、1992年武蔵野美術短大通信教育部を卒業。自動車メーカー、バリアフリー機器メーカー、鉄道車輌メーカーで商品企画、開発管理、工業デザイン、設計などものづくりの計画に関わる業務を担当し、特に商品開発プロセスとバリアフリー・ユニバーサルデザインについて広い角度から取り組んできた数少ない技術士。