東芝は2019年2月19日、パワー半導体を従来より高効率にスイッチングできる駆動回路を開発したと発表した。新たに開発したフィードバック技術を用いることで、温度などの環境変動やモーターの動作状態の変動の影響を受けずにスイッチング遷移速度を一定に保つことが可能になった。これにより、パワー半導体のスイッチングの際に生じる電力損失はフィードバック技術を利用しない従来の駆動方法と比べて、低負荷時で25%、常温時で20%低減できるという。
自動車や鉄道、冷蔵庫、エアコンなどの電化製品に用いられているモーターは、パワー半導体が電気の流れのONとOFFを繰り返すことで電流・電圧をコントロールし、高効率に駆動している。ONとOFFの切り替えはスイッチングと呼ばれ、スイッチングにおいてOFFの状態からONの状態に遷移する速度を遷移速度と言う。
遷移速度が早いと消費電力が少なくなる一方で、遷移速度が早すぎるとノイズが発生するため、機器の誤動作につながりやすい。誤動作を防止するため、ノイズの量が大きくなりすぎないように遷移速度には上限が設定されている。しかし、パワー半導体では、温度や負荷の電流などの変化によって逆に遷移速度が遅くなり、消費電力が大きくなってしまうという課題があった。
遷移速度が環境変化の影響を受けずに一定に保たれれば、電力損失を低減できる。従来は、パワー半導体の電圧を検出し、遷移速度を常に一定にするフィードバック回路を用いることで電力損失を低減させていた。しかし、遷移速度が変化する主要因が、駆動するパワー半導体とは別にあるダイオードがスイッチングする際に逆方向に発生する逆回復電流である場合には適応していなかった。
そこで東芝は、逆回復電流においても、遷移速度を常に一定にできるフィードバック回路を開発した。同回路は、あるスイッチングにおける電圧の遷移速度を保持し、次のスイッチングの際に制御を行うフィードバック機能を搭載することで、逆回復電流の影響を受ける遷移速度をコントロールできる。また、大小異なる2値の抵抗を用いて切り替える方式を用いることで、シンプルな構成で逆回復電流を制御できる。
加えて東芝は、フィードバック回路を搭載したパワー半導体をCMOSチップに集積化することにも成功。これにより、パワー半導体の小型化・低コスト化と電力損失低減の両方が可能となった。
東芝は、今後も同技術を適用した駆動回路の開発を進め、電化製品の低消費電力化の研究を進めるという。